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1. 監禁と巨人

初投稿です。お手柔らかに。

主人公が赤子なのでしばらく会話文はありません。

我、永遠のものなり

我、第一のものなり

我、掌握するものなり


汝、永遠のものなり

汝に名を授けよう

汝-


*****


 彼女の、いや、彼の初めての目覚めは困惑に満ちていた。ぼやけた視界で状況を確認しようとして愕然とした。どうやら診察台のような硬さのベットに寝かされ、周りを柵で覆われているらしい。上は塞がれていないが、高さはかなりありそうだ。

 ぼやけた視界と力の入らない体に絶望感を覚えながら、彼ははっきりとしない頭で懸命に考えた。たしか、大学おわりに中学校からの友人と会っていたはずだ。家に帰った記憶はない。

 友人と会って、それから…と懸命に思い出そうとしていると、突如扉の開く音が聞こえた。

 自分をこの奇妙な檻に閉じ込めた何者かの登場かと身を硬くした。彼はぼやけた視界で音のする方へ顔を向けた。

 檻がある部屋に入ってきたのは2人の人間だった。長い髪を下ろしている方が、髪が短い方よりも地位が高いらしいことが2人の動作から何となくわかる。2人ともドレスのようなものを着ていた。

 近づいてきた二人を見上げて、彼は困惑した。その二人は、巨人と言って差し支えないほどの巨体だった。彼を見下ろす顔は遠く、高くにあった。

 巨人が、檻に手を入れた。彼はどうにか逃げようともがいたが、思うように力の入らない体ではモゾモゾと動くので精一杯だった。ろくに這いずることもできなかったが、せめて怯えている様子は見せまいと、きつく唇を結んだ。

 彼を持ち上げた巨人はどうやら女であるらしかった。持ち上げたというよりも抱き上げたと表現した方が良いかもしれない。彼の頭を片方の腕にもたれかけさせ、笑いかけているようだった。そういえばガリバー旅行記に登場する巨人は、ガリバーに対して好意的といえば好意的だったなと、幼い頃に読んだ物語が頭の中で再生された。

 彼はそのままもう一人の、髪が長い方の巨人の腕に移された。

 髪が長い方の巨人も、どうやら彼を害する気持ちは無いようだった。始終、聞き慣れない響きで彼に何かを語って聞かせていた。

 彼は、この言葉が何を意味しているのか懸命に解釈しようと試みたが、母語の日本語とも、義務教育で散々習い受験でも使った英語とも違う言語らしく、これを理解することはできなかった。

 彼は、結局自分がどのような状況におかれているのかを欠片も理解することはできなかったが、どうやら差し迫った危険は無いだろうという結論に達した。そうすると、なんだか眠くなってきたような気さえする。

 難解な古典の授業を聞く学生のようにストンと眠りに落ちた彼を、巨人はただ機嫌よさそうに見つめていた。




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