焦燥(プロローグ①)
ー時は遡り20世紀中程。イタリアにてとある「異人」の報道がなされる。
曰く、なんのタネもなしに火を吹けるようになった人間が発見されたという。
その人間はその能力を用いて曲芸師として活動する一方、その人間を「怪人」だの「異端者」だのと罵り、曲芸師は心の病にかかり、活動開始からほどなくして自殺した。
それからしばらく各地であらゆる能力を持った「異人」が発見されるものの、人々から恐れられ細々と生きたという…ー
「だってさ!なんかロマン感じねぇ!!?」
なんだこいつ。もはや伝説じゃあねえか。
「そうか?そんなのどうせ都市伝説じゃねぇの。」
俺の名前は牛沢 刀哉。拓創高校3年の剣道部副部長だ。
そんでこいつは鼬坂 和輝。同じく3年の剣道部部長。
「まぁ〜いいや!お前進路どうするんだ?」
「俺は西京教育大学に進んで教師になりたい。お前は?」
「俺は…まだわからん!」
「なんじゃそりゃ…もう3年だぞ俺ら」
「今は剣道一筋人間だかんなぁ…でも…」
「…」
「…俺さ、心理学、学ぼうかと、思ってて…」
シンリガク!?
「ちょ、お前いきなりどう…した…ww」
「いいじゃんかよ!別に!!!」
「いやあまりにいきなりでさwwいいじゃん頑張れよ!」
「おう!じゃあまた部活でな!」
「3年最後の全国大会まであと1週間だ。各都道府県から各学年3名ずつ出る。今年はなんと個人では2名も…鼬坂と牛沢が出る。顧問として、数少ない枠を2名も獲得したということ…とても誇りに思う。全国大会では都道府県の枠をとっぱらってトーナメントで行なう。つまり同じ都道府県同士でも当たる可能性がある。心に置いておけ。個人はもちろん団体でも出場する。是非頑張って欲しい。」
「おい牛沢。今日もやろうや。」
「おう…」
緊張が道場を包む。油断や妥協が全く許されない。空気が張りつめ、周りの部員は刃のように鋭い空気に圧倒されていた。
「部長と副部長がやり合ってるな…レベルが高すぎてついていけない…」
「そりゃあ全国行くやつらだからな…流石の体捌きだ…」
「まあでもだいたいこの後は…」
『勝負あり!鼬坂の勝ち!』
「牛沢先輩も強いのになあ…いつもこの調子だな。」
「お疲れ牛沢!いやあ少しでも油断すると負けるから怖いなあ…!」
「…」
帰り道。
「じゃあな刀哉〜。」
今日も勝てなかった。昨日も一昨日もずーーっと負けだ…
このまま…俺は一生あいつに勝てないのか…?いつも張り合ってきたあいつに…何が違う…
畜生…畜生、チクショウ、チクショウ、チクショウ!
街灯に照らされて呆然と立ち竦む彼の背中は、やけに小さく見えた…
…もっと…強くなりたい…あいつよりも…誰よりも…!!
俺は結局あいつにあと一歩で勝てないまま、大会当日を迎えた…
どうも初めましてにくじゃがまんぢです。
マイペースにゆるりと投稿していきますのでよろしくお願いします。
さて、次の話では全国大会に出る訳ですが…
プロローグは全国終了までぐらいを考えてるので後だいたい2、3話ですね。仲間が出てくるのは更にちょい先になります。楽しみにしててね。