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無事に試験は突破できたようだ

 試験結果発表の日になった。俺は祈るような気持ちで結果が張り出されているボードを俯きがちに確認しに向かった。


「えーっと……俺の番号はっと……」


 あった。しかもどうやらクラス分けは最上位のAクラスらしい。


 俺が受験したここ国立魔術学院は毎年新入生を百人しかとらない少数精鋭を売りにしている学院だ。当たり前のことだが俺が暮らしているこの国エリュシオンにはここしか勉強を教える機関が無いというわけではない。もちろん他にも学院はいくつもある。しかし国立魔術学院はトップレベルの教えを受けることができるとエリュシオンの国民に大変人気があるのだ。


 クラス分けも特殊でAクラスが十人、Bクラスが二十人、Cクラスが三十人、Dクラスが四十人となっている。上のクラスに行けば行くほどレベルの高い魔術の授業を受けれるというシステムになっている。


 なんでそんな面倒なことしてるのかと師匠に聞いたら教える奴のレベルの問題だと言っていた気がする。凄腕の魔術師は少ないということらしい。そんな狭き門を突破してAクラスに入れたのは運がよかった、上から数えて十人目に番号が書いてあったためギリギリではあったようだが。


「しかしなんだこの点数、なんで俺だけ実技点にカッコが付いてんだ?しかも三十点も配点があるし」


 そう独り言を呟くと思わぬところから返答が来た。


「それは通常の方法以外で点を取ると付くマーク。学生で使える人はまずいないと思うけど、その人にしか使えない固有魔術とか、あとは応用技術によるボーナス点とか?」


 ただの独り言だというのに丁寧にその人は説明してくれた。背中まである厳かな金色の髪に意志の強そうな黒い瞳、スラっとしていて綺麗な人だ。俺よりも背は低いようだが。とても落ち着いた雰囲気のある女性だった。


「わざわざありがとう、詳しいんだな。ここにいるってことは君も受験生なんだろう?」


 結果はどうだった?と聞こうとすると察したのか先に答えてくれる。


「心配しなくても大丈夫、落ちてないから。ちゃんと受かってる、ほら一番上」


 そう言いながら女性は右手の人差し指と中指でつまんだ受験票をひらひらと宙で泳がせている。


「……確かに一番上の受験票の番号と同じだ。凄いんだな君、九十八点って。完全なトップ合格じゃないか」


 そう俺が素直に褒めると彼女は無表情ながら少しムッとした態度になるのが分かった。


「二つ言わせて。私は君じゃなくてアイ、アイ・エリクシア。そして私から言わせれば筆記で五十点満点を出しているあなたの方が信じられない」


 見た目に合う綺麗な名だと俺は思った。そして疑問も頭の中に湧いた。


「すまないエリクシアさん、自己紹介もせずに。俺はユウ・アストレアだ、なんとでも呼んでくれ。そして筆記試験のことだが勉強はしっかりしたし問題範囲の運も良かったんだろう。ただエリクシアさんも四十八点だ、信じられないって程でもないだろう?」

「私のことはアイでいい、貴方は多少は信用できそうだから。で、筆記のことだけど。うん、良い機会だし合格祝いってことでもうちょっと話そう?ここで立ち話もなんだしね」


 そう言ってアイは歩き出してしまった。歩く所作も凛としている、頭も良いようだしどこか良いところのお嬢様なんだろうなと自然に伝わってくるように感じた。先に行ってしまったアイを慌てて追いかける。


「待て待て、どこに行くつもりなんだ?」

「ユウは知らない?この道の先に美味しいカフェがあるの」


 師匠への合格報告……は後でもいいか。友達とお茶するなんて今までしたことなかったしなんか普通っぽくていいしな、取り敢えず付いて行こう。


「わかったわかった、でもなんで俺なんだ?友達とかいなかったのか?」

「失礼ね、居たけど筆記満点とかいう頭のおかしいことをしてくれたユウの秘密を聞きたくてね?」


 意味が分からない、もしや満点を取らせないようにするための設問でもあったかと問題を思い出す。しかし問題を思い返してみてもそれらしい問題は無かったような……。


 そんなことを考えているとアイが案内してくれた店に着いたようだ。


「いらっしゃいませ、二名様ですね。席にご案内致します。」

「ありがとう、角のテーブル席を使わせてもらってもいい?」


 アイは店の角を指しそう店員に告げている。


「はい、かしこまりました。ご案内致します」


 そうして俺たち二人は角の席に案内された。この席……違和感が凄いな。


「何だこの席、やけに他のテーブルから死角になってるんだな」


 俺がそう言うとアイは少し驚いたようで。


「ユウ、貴方凄いね。普通は気付けないよ?」


 ちょっと内緒の話をしたい時が昔あってね、変なことするつもりはないから安心してとアイは笑っている。話のついでに二人分の注文を済ませる。俺はブレンドのコーヒー、アイはアールグレイだ。


「あぁ、まあなんというか経験でな。それよりも話を聞かせてくれ、筆記試験で満点を取ることは何が変なんだ?」

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