入学試験
初めまして、しきです。区切りの良いところまでは既に書き溜めているためそこまでは更新、それ以降はまたストックが増え次第更新していきますのでよろしければお付き合いください。よろしくお願いします。
――普通の暮らしって何なんだろうな。
それはある時ふと俺がこぼした一言。それを聞いた俺の師匠は少し悩んだ後無責任にも言い放っ
た。
「じゃあお前、私の知り合いがやってる国の学院に三年間通ってこい」
悪い笑みを浮かべているなと思った、だが嫌な予感以上に楽しみがあったのだろう俺はすぐに決断した。
「学院……、行ってみるか!」
当然と言えば当然なのだろうが俺が入学しようとしている国立魔術学院には入学試験とかいう何とも面倒なものがあるらしい。流石に師匠の七光りでも入学試験を顔パスするといった常識外れのことはできないようだ。
仕方ない、師匠から師匠から学院に通う三年間は仕事しなくても養ってやると言われたわけだし、しっかり勉強して真面目に試験を受けるとしよう。試験までまだ三か月ある、みっちり勉強すればなんとか入学くらいは出来るはずだ。
そしてあっという間に時は過ぎ国立魔術学院の入学試験日となった。ここの学院の試験の点数配分は筆記で五十点、実技で五十点の計百点満点だ。
筆記試験についてはかなり勉強したし、なにより内容の大半がこの世界で生きて行く上で必要な知識で知っていることが多かった為満点近く取れたであろうといった感覚で終えることができた。
問題は実技の方だった。魔術の素養を試すためだかなんだか知らないが、今使える魔術で五十メートル先にある的を壊せだの隠れている試験官を探せだの、さらには遠くの箱を持ち上げてみろだの全て無理だった。だってそういう魔術は師匠と過ごしてきた日々ではしてこなかったのだ、無理だ。
やけくそになった俺は実技最後の試験だった「教官が的を壊す魔術を放つのでどんな形でもいいから防御魔術で的を守って見せよ」という内容の試験で防御ではなく教官が放つ火の魔術を破壊してやった。これなら普通の魔術が苦手な俺でもできるのだ。
実質撃たせなかったんだから防御だろ。とへそを曲げていた俺は教官に振り返ることなく無視して試験会場から帰った。
帰ってから師匠に今日の試験の話をしたら腹を抱えて大笑いされた。そうだな、勉強したから知ってるんだ俺。師匠が教えてくれたこの魔術破壊という魔術、これは軍でしか使われてない軍用魔術なのだ。
今まで普通に生活してきた学生たちは存在を知らない魔術なのである。そりゃ普通って何なんだろうなとか言っておいて試験受けに行って普通の試験で普通じゃない事しでかしたんだから笑われるわな。仕方ないだろうなんとしても国立魔術学院に入学したかったんだから。
その日はもし落ちてたらすまんとだけ言って床についた。