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初恋は珈琲の香り  作者: 袖白黒雪
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生徒会役職と活動報告会

 放課後となり下校する学生達を横目に、喫茶店金木犀の店内では春野高校の制服を着た女生徒が二人。

 低身長でまな板な少女の名前を東雲遥。幼馴染みで一つ年上の先輩である。

 その対面にいる高身長でメロンを抱えているのは八雲雅。同じく一つ年上の先輩。

 この二人によって生徒会役員となった俺は、ミーティングという名の無銭飲食に必死な先輩二人に振り回されていた。


「ちょっと橘君?頼んだものが来ないのだけれど?」


「すいません東雲先輩。注文入ってから淹れているので、すぐにはお持ちできません」


「橘君。このチーズケーキ美味しいわ。今度作り方を教えてくれないかしら?」


「構いませんよ八雲先輩。簡単に出来るのでお勧めします」


 確かに俺は喫茶店金木犀の息子であり、跡を継ぐ立場だ。だとしても、これではいつまで経っても話が進まない。

 やって来るなり、やれ飲み物だ。お菓子だ。などと言いつけてくる。父さんも半ば呆れ気味だぞ。


「さてと、生徒会の活動について報告するかい?」


「そうね。このままじゃただのお茶会だわ」


 東雲先輩がやっとやる気を出したようだ。二人ともカップを皿の上に置く。陶器独特のカチャリという音が心地よい。そんなことはどうでもいいのだけれど……


「いきなりだが、5月より生徒会のみで他校との交流を図ろうと思っている。他校の風紀や生徒会活動報告をお互いに確認しあうというのが、大きな活動だね」


「それに加えて、今後の活動の方針を決めるというのもあるわ」


 他校との交流。しかも生徒会のみで行うという事は、何かしら役職を持った人間が行くのだろう。今更ながら、俺の役職はなんなのか。あの時聞いておけばよかった。


「活動をするのはいいんだけど、俺は何の役職なんだ?聞いてなかった俺も悪いけど、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」


 心配なのはそこだ。会計にでもなってしまったら大変だ。数学が苦手な俺には向いていない。書記なら出来ると思う。会長と副会長が目の前にいる以上、空いているのはこの2枠しか無いはずだ。


「橘君には書記をしてもらう」


「丁度、書記の子が転校しちゃったから空いてるのよ。だから、貴方に入ってもらったの」


「なるほど。書記なら大丈夫です」


 書記と聞いて安心する。実際、中学の頃に一時的に書記をしていたこともある。場所は違えど似たようなものだろう。


「後、橘君にはコーヒーを淹れて貰うわ」


「はい?」


 聞き間違いかと思ってしまった。生徒会にバリスタなんて必要なのか……

 因みにバリスタとは、エスプレッソマシーンを使って上手にコーヒーを淹れるだけでなく、珈琲豆や珈琲に対する知識を持っており、お客さんに癒しの空間を提供する事が出来る人の事である。ちゃんとした資格として取得する事が必要なのである。

 要するに、バリスタの資格を持っている人の事をバリスタと呼ぶのだ。

 一応バリスタの資格を取れるほどの知識と技術があるそうなのだが、なかなか講習をしているところがなく、今現在は通信制の資格取得を視野に入れている。

 つまり、俺はバリスタ取得者ではない……しかし、この場合先輩方が言っているのはつまり、生徒会でバリスタとして働け。と言っているのだ。


「資格持ってませんが?」


「喫茶店で育ち、立派なバリスタとして活躍している父親の元で学んだ知識や技術があれば、それはもう充分にバリスタと呼べるでしょ」


「遥の言う通りだとは思うわ。資格なんて後からでも取れるわけだし、取り敢えず生徒会の中では関係無いわよ」


 なんとも無茶を言う。まあ、コーヒーを淹れる事は好きだし、学校で淹れるなら、ドリップだけで良いだろう。消耗品は小遣いから買うとして……珈琲豆は家から持ってくるとしよう。


「まあ、良いですよ。簡単なものしか出来ないですが……」


「じゃあ決まりだね。明日から宜しく」


「よろしくね」


 こうして、生徒会書記兼バリスタとして生徒会の一員となったわけだが、本当の問題は先に話に挙がっていた他校との交流……

 交流活動を通して大きく変化していくことになるとは、この時の俺は知らなかったのである。

 




 

 

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