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初恋は珈琲の香り  作者: 袖白黒雪
3/6

少女の想い

 今日で丘乃高校2年生になったこの春。私、桜井栞17歳はとあるお店に居ます。

 そこは私のお気に入りのお店。金木犀って名前の喫茶店。読書が日課の私にはうってつけのお店。緩やかに流れるクラシックが気持ちを落ち着かせ、静かな店内は誰にも邪魔されず読書に没頭できる場所。窓際の席は柔らかな太陽が明るく照らしてくれる。だから私は窓際の席が大好き。

 実を言うと、このお店が好きなのはそれだけじゃない。ここで働く一人の青年が気になるから。

 制服から見ると喫茶店金木犀から近い、春野高校の生徒だと分かる。縁なし眼鏡をかけた、少し目付きの悪い人。それでいて、時折見せる笑顔に私は心奪われた。コーヒーを淹れる姿も格好いい。聞いた話だとマスターの息子さんみたい。私が本人から聞いた訳じゃないけど……


「格好いいなぁ……」


 小さな声で呟くと、自然と頬が熱くなる。それだけじゃなくて、鼓動も速くなっていく。

 私は多分……彼に恋をしてしまったんじゃないかなぁ。

 こんなことは生まれて初めての経験だから言い切れないけど、そうとしか言いようがなかった。少なくとも私が今まで読んだ本で得た知識では恋に間違いないと思う。

 いけない……何か頼まないと!アイスカフェオレにしよう。


「アイスカフェオレをお願いします」


「かしこまりましたぁ。千尋、アイスカフェオレ一つ」


 思わぬ所で彼の名前を知ることが出来た!千尋君かぁ……いい名前。女の子っぽい名前だけどそれがいい!


「お待たせしました」


「あ!あああ、ありがとうございます!」


「ごゆっくり」


 一分もないけれど、私には凄く長く感じた。だって目の前に千尋君が居るのだから。心なしか赤くなっているように見えた。

 もしかしたら……なんてね。

 妄想が捗る。最早読書どころではなかった。

 仕方がない……今日は帰ろう。

 会計を済ませ、ドアを開ける。カランカランと鈴の音が頭上でなる。まるで、またおいで。と言われているよう。

 

「ありがとうございましたぁ」


「ありがとうございました」


 マスターと千尋君の声で背中を押され、私は外に出る。

 明日も来よう。心に決めて私は帰路についた。


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