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第8話

「ん……」


 意識を取り戻した俺は知らない部屋に寝かされていた。そこは木造の家の一室であるようだった。

 左手には盾が装着された状態。

 

 そこで思い出した。

 どうやら胸部に攻撃を受けたらしいということを。そして、意識を失ったということにも気がついた。

 だが、今、やられたであろう部位を触ってみてもそれほどの痛みは感じなかった。

 

「気がついたか?」


 盾の声だ。


「これはどうなってるんだ? ここは?」


「お前の傷は私を装備していることで癒えつつある」


 この盾を手にして以来、ダメージを受けたことがなかったため気がつかなかったが、ベルを所持している効果には傷を回復させる効果もあったらしい。


「しかし、さっきの攻撃は一体!?」


 あの突然の攻撃はなんだったんだろうか?

 まるで狙撃されたかのようだったが。


「私が思うに恐らくは魔王の配下の攻撃ではないだろうか」


 盾が俺の疑問に答えてくれる。

 確かにその可能性は大いにあるだろう。

 俺は魔王に警戒されていた。

 誰にも見つからないように封印した邪神の姉を見つけ出し、こともあろうか魔王の前まで連れていったわけだし。

 その魔王が配下に命じて俺を監視させ、隙あらば俺を始末させようとしていても決しておかしくはない。


「なんにせよまたベルに助けられたらしいな」


「気にするな、私としてもお前がいなくなってまた一人になるのは嫌だからな」


 そこでふと疑問に思ったことを口に出す。


「でも、どうやってここに移動したんだ?」


 俺が言葉を発するとほぼ同時に、戸の開く音がした。

 そちらを注目すると、がたいのいい男が入ってきた。顔が黒々とした髭に覆われた歳は40くらいのおっさんだ。


「おお、兄ちゃん、気がついたか?」


「あなたは?」


「いやあ、通りすがりのもんだ。兄ちゃんが血を流して倒れてたもんだから、うちに運んだってわけよ」


「そうだったんですか、ありがとうございます」


 親切な人もいたものだ。


「良いってことよ。うちはちょうど宿屋でな。部屋も空いてたし」


 ただ、今俺の命が狙われているというのに、こんなところで呑気にしていていいのかという考えが浮かんでくる。

 この宿屋のおっさんの身にも危険が及ぶのではないか。

 早めに出ていった方がいいだろうな。



「兄ちゃん、もう体は大丈夫なのかい?」


 盾の力で傷がほぼ治った俺は早速宿屋をあとにすることにした。


「大丈夫です、ありがとうございました。これはせめてもの感謝の印です」


 闘技場の一回戦で勝った賞金の一部をおっさんに手渡そうとしたが、別に泊めたわけじゃないからと丁重に断られた。



 俺は街中を歩いていた。


「なあ、ベル」


 俺は盾に話しかける。


「なんだ?」


「盾の結界はあれからどうなった?」


「破られてから数時間経ったからな、まだ完全ではないが、かなり回復したぞ」


「じゃあさっきのような攻撃は防げるのか?」


「ああ、あの程度の攻撃なら心配はない」


 やれやれだ。

 しかし、これからどうするのか。

 あの弟を赦すことは断じてできないが、今のままでは再戦を挑んだところで返り討ちにあうのは目に見えている。


「ベル」


「今度はなんだ?」


「俺は強くなりたい」


「そうか、そうだろうな」


「強くなるためにはどうしたらいい? お前の知恵を貸してほしい」


「方法が全くないわけではない」


「本当か!?」


 彼女の発言に俺は思わず食いついた。


「ああ。今、お前にとって結界はただの防御壁でしかないが、これを操って攻撃手段として用いることができれば、戦力上昇が見込める」


「結界を操る? そんなことができるのか? 具体的にはどうすれば?」


 盾を装着していれば自動的に俺の周囲を完全に包み込む結界。防御手段としてはこの上なく頼もしいが、これを操るとはどういうことだろうか。


「前にも言ったので分かると思うが、お前を守っている結界の内部は異世界だ」


「ああ、そうらしいな」


 実際そのおかげで、ロルの攻撃すら大半を退けた。普通のやり方ではこの結界を突破することはできない。ロルは普通ではないやり方で突破してきたが。


「この結界はいわば、この世界と異世界の境界だ。今の私には境界を生み出すことしかできない。だが、私の考えでは、お前の意思の力が加えれば結界の形を変化させることができるのではないかと思っている」


「結界の形を変化させる?」


 それってどういうことだ?



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