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第6話

「次の対戦相手、ひょっとして兄さんなの!?」


「そう、みたいだな」


「え、マジウケるんだけど、ははは」


 この笑い声、虫酸が走る。

 そして、この笑顔、苦しみで歪ませたい。


「もうすぐだね、楽しみだよ、兄さん、ははは」


 そう言ってロルは去っていった。


「お前、弟がいたのか?」


 盾が話しかけてくる。


「ああ」


「ひょっとして、お前がここまで村人であることにコンプレックスを持っているのは……」


「お察しのとおり、あいつが原因だ」


「そうなのか。ならばお前があいつに復讐できるよう力を貸そう」


「ああ、負けられない。この戦いだけは絶対に」


 そうだ。

 これまで何をしてもあいつには敵わなかった。

 いつもあいつにバカにされてきた。

 だが、今は違う。

 俺には最強の盾がある。

 いくらあいつが勇者であっても倒せなくはない。

 

 俺は盾に神官を吸収した。

 前回勇者アリアスと戦ったときと同じように神官の転職魔法を使って、あいつを村人にしてやる。

 これで準備は万端だ。


 

 そして、試合が始まった。


「兄さん、かかっておいでよ」


 だが、俺は動かない。


「兄さん、先手必勝っていうでしょ? ほら、先に攻撃してきなよ」


 こんな分かりやすい挑発はないのだが、こいつが言うと本当に突撃したくなってしまう。


 だが、ここは我慢だ。


「じゃあ、俺から行くよ!」


 すると、ロルはゆっくりとこちらに歩いてくる。

 イライラさせられるほどのスローペースだ。

 のらりくらりと。

 そして、一瞬にして消えた。

 そう思うと目の前に腹立たしいにやけ顔があった。

 驚いて固まる俺。

 盾でロルの攻撃を受け止める暇もない。

 複数の斬撃が結界によって防がれる。


「兄さん、なんだよ、いつの間にそんなすごい盾を手に入れたの?」


 相変わらず不快な笑顔を浮かべているロル。

 ロル、お前は確かに強い。

 だが、この盾がある限り俺は無敵だ。


「兄さん、その盾の防御に絶対の自信があるみたいだね」


 ロルの剣が光りだす。

 

「シャインブレイド!」


 これは勇者アリアスも使った魔法だ。

 振り下ろされた剣先から白い光波が放たれる。

 俺は盾で受け止めて、反射させる。

 ロルはそれを素早くかわす。

 やはり、勇者という連中はなかなか一筋縄ではいかないらしい。


「へえ、盾本体に攻撃が当たると反射する仕組みになっているのか。なら、迂闊に攻撃はできないね」


 まだまだ余裕の笑みで感心するロル。


「なら、あらゆることを試すまで」


 再び姿を消すロル。

 どこに消えた。

 探してる間に死角から巨大な光の玉が飛んできた。

 盾本体で受け止められず、結界がそれを防ぐ。

 ようやくロルを見つけると、呪文を唱えていた。そして魔法が発動する。


「アースシェイキング!」


 地面が揺れ始める。

 だが、結界内部には全く揺れは来ない。

 

「結界の下の部分は存在しないのかと思ったけど、そういうわけではないみたいだね。ちゃんと地面からの攻撃も防いでるみたいだ」


「ロル、諦めろ。お前の攻撃は届かない」


「兄さん、似合わないよ。そんな自信満々なのは。もっとびくびくしてるほうが兄さんらしいよ、ははは」


 奴の発言に腸が煮えくり返る思いだ。


「ファイアーストーム!」


 次にロルが繰り出した魔法は、無数の火の玉で全方位からの攻撃だった。

 しかし、これも難なく防ぎきる。

 

「やはり、どこにも穴はなさそうだね」


「ロル、納得したか?」


「あまく見ないでほしいな、俺のこと」


 すると、ロルは再び呪文を唱え始める。


「ダークテレポーテーション!」


 瞬間、ロルは姿を消して俺の真ん前に現れた。結界によって弾き飛ばされているロル。


「内部にテレポートもできない、か。なら、今度は」


 呪文の詠唱とともにロルの剣が黒い闇に包まれる。

 

「ダークディメンションスラッシュ!」


 遠くでロルが黒い剣を振るうと、俺の目の前に刀身が現れて結界を攻撃する。

 おそらくこれは次元を切断する攻撃魔法なのだろう。だが、それすら盾の結界は退ける。

 これにはロルも驚いていた。


「次元を斬る攻撃でもダメなのか、ちょっとチート過ぎない、兄さん? そんなのどこで拾ってきたんだよ?」


「近くの洞窟だ」


「兄さんにしては、面白い冗談だなあ、ははは。

 それにしても大した盾だよ。そこまで強い盾は見たことない。まるで、結界の内部は異世界みたいだね」


 と、そこで何かに気づいたように満足げにうなずくロル。

 

「そうか、異世界か。異世界なんだね、兄さんのいるところは。はははははは」 


 本当に癇にさわる笑い声だ。


「何がおかしいんだ、ロル!? そうとも、この結界の中は異世界だ。だから、お前の攻撃はどうやっても届かない」


「兄さん、分かっちゃったよ俺。その盾の弱点」


 ロルがこれまでで一番邪悪な微笑みを浮かべた。


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