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 体育館が歓声に包まれていた。並べられたパイプ椅子から立ち上がり、多くの学生が盛り上がっている。ステージの上では女生徒数名によるライブが行われていた。

 私はというと声をあげている観客たちを横目に、座ったまま演奏を黙って聴いている。隣には相変わらずボーっとした表情でライブを見つめるラカンの姿があった。戦っているときの姿とはエラいちがいよね。


 ビルの屋上で繰り広げられた魔術師射的ゲームからすでに半月がたち、仏宇野高校では学園祭当日を迎えていた。

 あの事件のあと――瀕死の重傷で無力化された魔術師は、その道のプロに任せたほうがよかろうとニップル騎士団に引き渡されることになった。今回は被害者の出る悲しい事件だったけど、ジャミルと知り合えたことだけはよかったと思うわ。

 今回、風魔衆はニップル騎士団とのつながりを得た。これから風魔衆は日本における性遺物の情報収集に協力する。そのかわりに騎士団がもつ対魔術師戦のノウハウを頂くことになっている。

 私個人的にはニップル騎士団の思想とは相容れないのだけれど、背に腹は代えられないのよね。風魔衆とニップル騎士団が手を結ぶのを涙を呑んで見すごすことにした。

 このまま黙っているのは申し訳なかったので、カールハインツ氏にはニップル騎士団のことを正直に伝えたのだが――。


「袋とじを覗くとき、人は大人への階段をのぼる。気を付けろ……。特殊な通過儀礼というのは、時として一生の性癖をきめることとなる」


 一見アホな発言をしているようだが私にはわかっていた。カールハインツ氏は私にニップル騎士団を見極めさせようとしているんだわ。

 カールハインツ氏は以降ニップル騎士団について何も聞こうとはしなかった。過去、彼とニップル騎士団との間にどんなことがあったのかは知らない。でも彼が深淵を覗いたうえで彼らとは別の道を歩んでいるのは確かよ。

 だったら私も誓う。私自身がニップル騎士団に取り込まれかねないこの危険な任務……。かならずやり遂げてみせると。


 なんてカールハインツ氏とのやりとりを思い出して気合を入れていると、どうやらライブは終わったらしい。次の出し物への準備期間となる。

 私は膝の上にのせられたウクレレに目をやると思わずため息をもらした。

 バンドのメンバーが怪我をして、私に代役がまわってくると読んでたんだけどどうやらハズレたみたいね。せっかくスタンバってたのに無念。


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