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 仏宇野高校が遠目に眺められるほど離れた建物。それは築三十年を超える五階建て空室率百パーセントのオフィスビルだった。当然なかには誰の姿もなく、建物の内部は静まりかえっている。

 しかしその屋上には仏宇野高校をじっと眺める男の姿があった。


「さて――、そろそろ自身の衰弱に気づき始める頃合いか。恐怖で慌てふためく様を堪能するとしよう、クックックッ」


 男は宝石を取り出すと床に転がす。前もって描かれていた魔方陣がうっすらと輝きを放ちあたりの空気が変化した。

 その刹那――、爆音とともに床の一部が粉々に吹き飛ぶ。それはちょうど宝石を転がした辺りである。

 男の顔は驚愕に歪んでいた。この事象は男の期待するものとは違っていたからだ。






「とんでもない大魔術を使うわりに臆病なのね。おかげでアナタを見つけるのに随分時間がかかってしまったわ」


 私は向かいにあるビルの屋上から今回の首謀者に笑みを向けていた。


「馬鹿な……。あの結界から抜け出るのは、同じ四天王でも難しい。ましてや奇襲で閉じ込められたのだ。魔術に必要な媒体など持っていない状況で脱出など不可能なはず」


「そうね。でも残念、私は魔術師ではないのよ。そのアナタの物差しで私のことは測れない。そしてそれがアナタの敗因となるのよ」


 私の言葉に男の表情が怒りのそれに変わる。同時に素早い身のこなしで懐からなにかを取り出そうとした。

 でも男の肩に鮮血が走り、その衝撃に男がふらつく。


「ぐっ、おのれ……。小癪な真似を――」


 さらに男がなにかをする素振りをみせるが、男の両足になにかが突き刺さり男は膝をつく。男は小振りの刃物が突き刺さっているのをみてさらに表情をゆがめた。


「こ……の……、小娘がぁああああ!」


 男が激昂したがそれをかき消すように再び爆音があたりを支配する。動くなと言わんばかりに男の周りがはじけ飛んだ。前もって準備させておいた風魔の狙撃班は大活躍ね。いやぁ、スナイパーライフルぱねえわぁ。


「なんだ? 警告のつもりか?」


 男の顔が冷静なものに変化したけど、私は煽るように笑顔を返した。


「フフフ、隠しても無駄よ。焦っているのはわかってるんだから。大変よねえ。頼みの綱の魔術を使う暇がなくって」


 男の表情が僅かに動いたのを私は見逃さなかった。

 やっぱり魔術師相手にはこういう戦い方が有効ね。地獄で待ってなさい、ギシギシカップル。アンタたちの仇はきっちり送り届けてあげるわ。

 え? ギシギシカップルがなんで地獄にいるの前提なんだって? ボッチの妬みを買うような真似をしてるんだから妥当でしょう。私の独断と偏見で決めさせてもらったわ。


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