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うちの学校には裏門側にも小さめながら玄関口がある。ラカンが案内してくれたのはその玄関の近くにある管理室だった。
ラカンは入り口にあるパネルをあたりまえのように操作してカギをあげる。
アンタ、なんでパスワードとか知ってんのよ。
……ああ、そうか。ここにも生徒会長の魔手が伸びているのね。会長恐るべし。まさに学校を牛耳る闇の支配者だわ。ぜひともその支配権を少しだけでも私にもわけてあたえてほしい。そしたら生徒会の運営資金の半分は私のものね、デュフフフ。
「……」
ラカンは黙って管理室の奥へと進んでいく。管理室内はよくわからない機械やパソコンが並んでいた。
たぶん設備の監視用なんだろうけどぜんぜんわからないわね。あっ、なんだかモニタがならんでる。今はなにも映ってないけど、これは監視カメラかしら。
私は初めて見る管理室を見学しながらラカンについていった。
するとラカンが不意に立ち止まってこちらに向き直る。
「ここ」
ココってなによ、ココって。なんにもないじゃないの。
ラカンがタンタンと足を鳴らした。マンホールのせいで小気味よい音だ。
まさか……、下水道を使うつもり? かなり遠慮したいんだけど。
「大きめに作ってある。通行に問題ない」
なんでも下水道工事に介入して、地下道として利用できる下水路にしてもらったとのこと。会長……、アナタどれだけ権力握ってるのよ。え? 違う? 会長じゃなくて風魔衆が介入しているって?
なんで風魔衆が関わってくんのよ。
「うちの学校は風魔が経営してるから」
……知らなかった。どおりでやりたい放題なわけね。
でもそうなるとジゴロあんちゃんがヤンキー先生として転入してくる可能性も。
「さすがにそれは無理」
そりゃそうか。アイツならここにある監視モニターでトイレを盗撮しかねん。
「それはひどい」
私の発言がひどいのか、ジゴロあんちゃんの素行がひどいと言ってるのか判断にまようところだ。
まあ、どっちでもいいか。
「私でも通り抜けられるのか?」
これまで黙っていたジャンが確認してきた。たしかにジャンはガタイいいしね。
「問題ない……と思う」
どうやらラカン本人は実際に抜け道を利用したことはないらしい。
こっちは絶賛敵の魔術に晒されていることだし、早速いってみますか。