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窓の外に目をやると真っ暗で何も見えなかった。たしかに日は暮れていたけれど、この闇の深さは異常だわ。
「どうやら我々はこの学校に閉じ込められたようだな」
なにぃ! 私の最終奥義である「逃げ」が使えないじゃないか!
やばい……。しょっぱなから重い一撃をくれてきやがりましたよ、今回の敵。
でも本当に閉じ込められたのかしら? 一階に降りて外に出れば案外でられるんじゃないの?
「外に出たらどうなるかわかるかしら?」
「さて……。私も専門外だからわからんがよしたほうがいいだろう。魔術師の性悪さは筋金いりだ。どんなひどい目にあうか想像もできん」
くっ、どうやら戦いは避けられないみたいね。私たちはこの状況をなんとか生きのび、さらに脱出する方法を見つけなければならない。
「これほどの大魔術を使ったとなると、敵は相当な腕前の魔術師になるな。学校のいたるところに魔術的な痕跡が残されていたし、時間も相当にかけられているだろう。ここまでのことをしてまで狙う理由に心当たりはあるのかね」
なかなか痛いところをついてくるわね。
「私たちが以前に魔術師に関わったと話したわよね」
とりあえず話せるところまで話しておくか。
私は東方魔道連四天王とのかかわりについてジャックに説明した。
「ほう、東方魔道連四天王は欧州の魔術師にも劣らないと聞くが、よくも無事に倒せたものだ」
「運がよかったの。はっきりいって敵が自滅したってだけの話よ。でも魔術師側はそれでは納得してくれないみたいで、こういうことになってるってわけ」
「それはお気の毒に」
ジャックが肩をすくめた。
これは完全にあきらめてるわね、チッ。魔術師のことを知ってるみたいだし、私としては何か助言がほしかったんだけど。
「このままこの場にいてもなんの解決にもならんし、敵がなにかリアクションを起こす前にとりあえずここから移動したほうがよかろう」
たしかにそのとおりね。
私は教室を出ようとしてふと気づく。他にも生徒が残ってるんじゃないかしら。このまま巻き込んじゃうのは気が引けるんだけど。
「大丈夫。校内に生徒の気配はほとんどなかった」
ほとんどってなによ。少しは残ってるんじゃないの? 適当すぎるわよ、ラカン。
「校内に潜入したおり私も人はみていない。安心せよ」
安心できないわ! アンタみたいな怪しいおっさんが校内をうろついてたなんて、安心できる要素がこれっぽっちもないわよ!