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「残念だけど音楽は詳しくないから評価できないわ。それで――アナタはいったいどこのどなたなのかしら?」
幽霊だったらローキック。その他だったら通報しますたの刑よ。
さあ、好きなほうを選びなさい。
余裕の笑みを浮かべていた謎の美女は、少しの間もったいつけたあと口を開いた。
「私はクリスティーナ宝城――貴方には東方魔道連四天王と言ったほうがわかりやすいかしら? 吉田花子さん」
ぐへっ! いきなりぶちかましてきやがりましたよ、この女。
クッ、まさかこんなに早く魔術関係者が現れるとは……。それもあのエドモンドと同じ四天王の一人とは。
キケン! キケン! これはやばいわ。ボスクラスの襲来よ!
ラカンもすばやく反応して戦闘態勢に入ったみたい。フッ、こんなときは頼りになるわね。
「フフフッ、そう構えないで。別に貴方と戦おうと思ってやってきたわけじゃないのよ」
ほほう、それが本当なら朗報ね。でもそんな言葉で私は油断しないわよ。だいたい私はエドモンドの遺産という死活問題も抱えているからね。これがばれてしまったら問答無用で戦闘なんてパターンもあり得るのよ。
「一度見ておこうと思ったのよ。エドモンドを倒したって噂の貴方をね。それと――」
クリスティーナの視線がラカンに移った。
「もう一人見ておきたかったんだけど、どうやら来てくれなかったみたいね。いろいろ噂を流せば興味を持ってくれるかと思ったのに。残念だわ」
なるほど。今回の騒ぎの元凶はこの女で間違いないってわけね。
それにしても本当に顔合わせのためだけにこんな手の込んだことをやったっての? まったく人騒がせな。
それにしても会いたかったってのは誰のことだ? ラカンを見たってことは風魔の誰かかしらね。ラカンの姉である生徒会長かな?
いや、実力でいけばジゴロあんちゃんもあり得るか。あのビリビリ攻撃は魔術師が興味を持ってもおかしくないし。あんちゃんの可能性のほうが高いか。
それにしてもあんな男がタイプとは……。美人なのになんて難儀な好みの持ち主なのよ。
思えば私の周りには見てくれはいいのに中身が残念なのが多すぎるわね。生徒会の変態どもしかり。風魔の関係者しかり。
まったく……、私を見習って外見も中身もバランスよくしなさいっての。
相変わらずラカンの視線が痛い。