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私は慎重に音楽室の扉を開ける。
明かりはついていなかったけど、室内は月明かりのおかげで多少は目が効いた。
問題のピアノだけど確かに誰かがいるようね。私たちが現れたのを気にすることなくまだピアノを弾いているわ。
なかなか余裕があるじゃない。だったら遠慮なくその顔を拝ませてもらうわよ。
というわけでラカンよろしく。
我が親友ラカンは阿吽の呼吸ですばやく壁に移動すると電気をつけた。
室内が明かりに照らされる。
若干まぶしく感じながら問題のピアノ演奏者を確認すると――。
知らない女性がそこにいた。しかもめっちゃ美人だった。
べっ、別に悔しくなんてないんだからね!
「……」
ラカンからの冷たい視線を感じたけどとりあえず無視。
というか私たちは未だ件の美女に無視され続けていた。彼女は相変わらずピアノの演奏を続けている。
足はあるようだし幽霊ってわけじゃなさそうね。もし幽霊と自己紹介しはじめたら遠慮なくローキックをパーンといれてあげましょう。そうしましょう。
私たちは無言のままピアノの演奏が終わるのを待った。
正直音楽についてはそれほど詳しくないからわからないけど、なかなかうまい気がするわね。でも大して興味はないから早く終わらせてほしい。
しばらくするとようやく演奏は終わったようだ。でも謎の美女は動かない。目は閉じたまま演奏を終わらせた姿勢でかたまっている。
おーい、自分の世界にはいりこむのはその辺にしてもらえませんかねえ。戸惑ってるお客さんを放置したままなんですけどぉ。
と思っていたら美女が目をひらいた。同時に目があう。
私の心の中を見透かされたような気がしてちょっとドキッとしたけど、ここでナメられるわけにはいかないわ。
クワッ!
とりあえず目に気合いれて対抗しておいた。
「フフッ、ピアノには結構自信があったのだけれど、気に入ってもらえたかしら」
ほほう、私の必殺「目で殺す」をうまくかわしましたね。これはなかなか油断のならない相手のようだわ。
心理戦は嫌いじゃないけど、こっちはオヤツを無駄にされて少し頭にきているのよね。ここは単刀直入にいってみようかしら。
「オヤツを無駄にしたのはダナコのミス」
だまらっしゃい!




