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出だしこそチョットつまづいてしまったけど、高校一年生の二学期は平穏無事な生活が続いていた。
というかこれが普通だと言いたい。一学期のように殺伐としたイベントが続くなんてことは、人生そうそうあってはいけないのよ。
しかし人間というのは不可思議なもので、こうまったりとした毎日が続くと刺激がほしくなるものである。かくいう私もそんな人間のひとりなわけ。
ならば目指さねばなるまい。未知の世界を。
というわけで私ことダナコと親友のラカンは立ち上がったのである。
さあ、雌伏のときは終わりよ。いまこそ「めざせ勝ち組乙女探検隊」再出動のとき!
「時代が私たちを必要としている」
「何を言ってるのかわからない」
テンションノリノリの気分に水を差すようなことを言うラカン。
はぁ……、まったく。アナタ「めざせ勝ち組乙女探検隊」メンバーとしての自覚が足りないわよ。
私たちは夜の学校を前にして足を止めていた。
なぜこのような状況にあるのか。一度ラカンにはちゃんと説明したほうがいいようね。
それは退屈な時間を過ごしていた私に、とても無視するわけにはいかない噂が飛び込んできたからである。
なんでもいま我が校の学生たちの間に、謎の怪奇現象の噂がひろまっているそうな。
「それなら私も知っている」
なぬ? それならもっと早くいってほしかったわ。私がいろいろな情報をかき集めるためにどんだけ苦労したと思ってるのよ。
昼休み――雑談を楽しんでいる集団にさりげなく近づいては、いつ話しかけられるかドキドキしながら待つ毎日。そんなさなかに我がヘルズイヤーで巧みに情報を収集したというのに。
まあいいわ。ラカンが知る情報ともすり合わせて今後の作戦を練りましょう。
なになに。
学校の前にある坂をブツブツ独り言を繰り返して登下校する少女を生徒たちが目撃している? その程度不思議でもなんでもないわ。
垣根の上にのぼって辺りを見渡している少女を近所のおばさんが目撃した? 別にたいして不思議なことはないと思うけど。
旧校舎で謎のドリンクを飲んでいる少女がいた? 確かに怪しいけど私が求めている不思議とは違うわ。通報しておきなさい。
ある日突然眼帯をして登校した少女を知っている? そんなのモノモライかなにかでしょ。放っておきなさい。
「……」
はぁ、大して役に立ちそうな情報はないわね。
仕方ない。私の独断と偏見で探索するとしますか。




