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なんだかんだで慌ただしかった夏も過ぎていき、夏休みも終わりを迎えようとしていた。風魔の里から帰った私は、ひとり自宅でくつろいでいる。
……というか一体いつになったら帰ってくるんだ? 父よ、母よ。
まあこっちは食べ物も充分にあるし、なにか不足する物があれば渡されたカードを使って事足りるんだけど。やはり一応肉親ではあるし心配はしているんだからね。
その心配も数時間後にかかってきた電話で杞憂に終わったわ。
なんでも話が盛り上がって世界を一周することになったそうだ。年末には帰るからという言葉を残して電話を切りやがりましたよ。
おいぃいいいい! 仕事はどうした? そんなノリで行っちゃっていいのか? 本当に大丈夫なのか? 我が両親よ。
……まあ、こういうノリは今に始まったことではないから気にするのも無駄か。とりあえずちょっとイラッときたので、ストレス解消のためネット通販でプロテインをポチっておいたわ。プロテイン購入履歴が並んだカード明細を見て驚き慄くがいい、ホーッホッホッ!
さてと、そろそろ恒例の儀式を始めましょうか。
私はサプリメントづくしの栄養補給で準備を整えたあと、日課のトレーニングを開始する。
まずは普通に筋トレよ。なにをするにも土台となる身体はしっかり鍛えておかなきゃね。
それから新たに日課となった干渉のトレーニングよ。私は使っていたダンベルの重りを増やしてから、さっきまでと同様のトレーニングを繰り返していた。
うむ、力が上乗せされているわね。
これが過酷な夏休みで得ることができた成果ね。自分の身体限定であるけど、ある程度の干渉が行えるようになったわ。
残念ながら他人への干渉はできない。あの悪魔に対しては干渉できたけど、よほど相性がよかったのかしら。あまりうれしくないんだけど。
ひょっとしたら悪魔が特殊なのかもしれない。まあこればっかりは確かめようもないし、確かめられる機会がやってこないことを祈るわ。もし悪魔と関わるようなことがあったら、どうせ碌な状況じゃないでしょうからね。
とりあえずは自身への干渉をもっと鍛え上げねば。今の底上げ程度ではラカンのスピードにすらついていけない。
ぐぬぬぬ、あの地面を転がされまくった屈辱。いつかはらさでおくべきか。
まあ、ラカンにはいろいろ世話になってもいるし。しばらくの間は大人しくしておいてあげるわ、フフン。
それにしても新学期か……。
ハッ!? これはアレよね。地味で大人しかった娘が、急にオシャレになってたり、ガングロになってたりするイベントだわ。
私もナメられないようにイメチェンするべきかしら。でもいまからじゃできることも限られるわ。とりあえず片目だけカラコンで様子を見るべきかしらね。
うーん、いまいち目立たないわ。これじゃ流行に乗り遅れてしまう。
よし! ここはドクロ付き眼帯で冒険よ。