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 ――なにぃいいいい!


 まるでアニメを倍速にしたようにゾンビ少女の動きが加速した。しかもモーションは変わってないので、なんだかワチャワチャしてて動きがキモイ。

 なんて感想を言ってる場合じゃない! めちゃくちゃヤヴァイ状況だ。

 せっかく開いていたゾンビ少女との距離がグングン縮まっていく。

 まずい! 十秒もしなくうちに追いつかれる!

 私は覚悟を決めると後退を止める。

 両足は肩幅より広い程度、やや腰を下ろしゾンビ少女を迎え撃つ。

 そしてゾンビ少女はワチャワチャした勢いのまま私に突っ込んでくる。

 全身を揺らす衝撃。

 私は相手の肩のあたりをしっかりと掴むことだけに全神経を集中させた。

 この少女がまぎれもなくゾンビであるのならば、もっとも警戒すべきは噛みつきである。それをさせないためには肩を押さえ、噛みつきの間合いに入らないようにしなければならない。

 相手は小柄な体格だったが、まったく遠慮のない体当たりに態勢を維持できず、私たちはもつれるように倒れてしまう。

 そのまま相手に上をとられる形になってしまったが、なんとか肩を押さえることには成功した。

 やはり思った通り少女の狙いは噛みつきだったようだ。先ほどから噛みつこうと迫ってくるが私が肩を押さえているため失敗している。

 どうやら頭脳戦では私のほうが上だな。というよりコイツからは知性が感じられない。

 ならばこのまま相手を揺らしてマウントポジションをひっくり返すのも簡単だろう。

 私は抑えている肩に力を加えて相手のバランスを崩そうと試みる。

 しかし、このタイミングで両腕にかかっていた圧力が増す。


 ――あぶねぇえええ!!


 危うく噛みつかれるところだった。とりあえずマウント返しはやめて全力で相手を押し返す。

 なんとか間合いをとったが、気のせいか徐々にゾンビ少女からの圧力が増している気がする。

 なんでだ!? 上からのしかかる力には限度があるはずだ。プッシュアップバーが友達の私ならば、この小柄な少女の体重を支えられるはず。だが実際には押され始めている。

 この矛盾の現認は……。

 私が力を発揮できていない!?

 どうやらこの非日常な展開に私は飲まれていたらしい。私としたことが何という不覚。

 ならばここからの逆転は可能だ。まずはゆっくり深呼吸。

 全身に無駄に入っている力を抜くことに専念する。このままでは無駄にエネルギーを消耗してしまう。

 クッ、なかなか難しい。おちつけ私。なんとしても緊張を解かなければ。

 よし! なにか面白いことを考えよう。そうだ、新春テレビでやってる漫才を思い出せ!


 ――プッ!


 ってやべえぇええ! 力が抜けるぅ! 必要な力まで抜けていくぅうううう!

 ちくしょう! 笑いの神! てめえ謀ったな! 改宗してやると言ったからってこのタイミングで裏切るなぁあああ!

 あっあっあっ!

 やばい! ゾンビ少女の顎が迫る!

 ぬぅおおおお! ここが正念場だ!

 耐えろダナコ! 頑張れ三頭筋!!


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