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『どうなっている!? なんの力もないはずの小娘がなぜ!』
フッフッフッ、かなり冷静さを失っているわね。ゆっくりと近づいてくる私に、ヤツも動揺しているようだわ。
というのもさっきから例のビリビリ攻撃がビュンビュン飛び交ってるんだけど、私にはかすりもしてないからね。
そうよ、もっと力を使いなさい。あなたの寿命が尽きはててしまうまでね。
というかさっさと早く退場しなさい。こっちもかなり辛いのよ。
最初にかすった攻撃は思いのほか効いてたみたいだわ。干渉の力で痛覚を遮断したとはいえ、ダメージが消えたわけではない。無理やり動かしてきた身体もだんだんと反応が鈍くなってきてるのよ。
どうやら私のほうも限界が近いみたいね。これはどっちが先にくたばるかのチキンレースになりそうだわ。
『我が……、人々を恐怖に陥れた大悪魔である我が! こんな小娘に押されているなど認めん!』
もはや目前に迫った私に、ヤツはその巨大な腕を振るった。しかもご丁寧に例のビリビリを纏わせるというオマケまでつけてよ。
まったくおバカさんね。そんな派手な攻撃なんてする必要ないのに。
今の消耗した私なら、ちょっと小突くだけでノックダウンされる自信があるわよ。
なんて考えてる場合じゃないわね。ここまで接近してくると攻撃をそらすのも難しい。とはいえ当然だけどよけるなんて器用な真似もできるはずなかった。
私はヤツを目の前にして倒れることでしかこの攻撃を逃れる手はない。身体のほうも限界で、一度倒れたらもはや立ち上がれないとわかってはいてもね。
いままで私の頭があった場所をヤツの薙ぎ払いが通り過ぎていく。
あぶなっ! 後頭部がぞわっとしたわよ。今のはかなりやばかったわ。少しでも遅かったら即おだぶつだったよ。
そして私は地面に倒れ伏ることとなった。ああ、日に焼けた地面が暖かい。というか熱すぎるわ!
でも今の私にはやはり立ち上がることはできなかった。
そんな私を確認してどうやらヤツにも余裕が戻ったみたい。
『クックックッ。どうやら死の間際、最期の輝きだったようだな』
フン、せいぜい勝ち誇るがいいわ。私のほうの仕込みはこれで完了よ。
私は倒れたまま片手をのばした。ちょうどヤツの足首を掴むようなカタチで。
『フン、無駄な足掻きを。貴様ごときが我に――、なに!?』
触れることさえできないと思った? 残念。
遺憾ではあるけど私とアンタはどうやら気が合うみたいよ。私はヤツとの繋がりを確かに感じながら、賭けに勝ったと思わず笑みがこぼれた。