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私は前に一歩足を踏み出す。
よし、思い通りに動いたわね。これまでの努力は着実に実を結んでいたんだわ。ちょっと感動。
でも感動してばかりもいられないわね。私はゆっくりと一歩ずつ悪魔との間合いを詰めていった。
『ほう、最後まで足掻く道を選んだか。ならばその愚かさの代償に、今すぐあの世へ送ってやろう』
来るか!?
ここからが正念場よ。残念だけど今の私には自分の身体を俊敏に動かすことは不可能だわ。だからあの悪魔の攻撃を凌ぐためにはアイツへ干渉するしかない。
でも自分の身体に干渉できるようになったばかりなのに、すぐに他者への干渉に挑戦するなんて無謀もいいとこよね。失敗するのが当然だと思うわ。
ここでカギになるのは、私の予想通りあの悪魔と私になんらかの繋がりがあるのかどうかってことよ。もしも当てがはずれたら干渉なんてできないだろう。
ただ、もし予想通りだったとしたら未熟な私でもアイツへの干渉が成功するかもしれない。小さすぎる希望だけどここに賭ける!
幸いにも干渉対象は自分の身体じゃないし、遠慮する必要なんてないわ。全力で電波を送ってやるわよ!
うぉおおおお! 悪霊退散! 悪霊退散!
『跡形もなく消し飛ぶがいい』
うぉおおおお! 例のビリビリ攻撃がくるぅううう!
あれが当たったら黒焦げは確実。アイツの言う通りバラバラに吹っ飛ぶ可能性もあるわ。
ああああああああ! はずせ! はずれろ!
笑いの神、ただでさえ信者の少なそうなアンタに私はこれまでついてきたのよ! 今ここでそのご利益のひとつでもくれたっていいでしょ!
フォオオオオオオ! 明鏡止水! 一日一善! 驚天動地! 罵詈雑言! 天上天下!
私の呪詛に効果があったのか、悪魔の攻撃は私の身体をかすめただけで外れた。
うぎゃぁああああ! 熱! というか痛!
かすめただけなのになんて威力なのよ。私のゆでたまごのようなプルンプルンの肌がぁあああ! おのれ、ゆるさん! 三大奥義をくらわせるわよ!
フゥフゥ、落ち着くのよダナコ。大丈夫、なんとか致命傷で踏みとどまっているわ。まずは自分に干渉して痛覚を遮断するのよ。そうすればまだ動けるわ。
それに事態はそう悪くはない。今の一撃、あの一瞬たしかにヤツは霞んだ。やっぱりアイツも瀬戸際にたってるのよ。今の攻撃でまた一歩、ヤツは消滅に近づいたんだわ。
なによりアイツの攻撃ははずれた。私の干渉は効いているのよ。
『外れた……だと……。どういうことだ? なぜ外れた……。いや、外したのか!? そんな馬鹿な!』
悪魔の二撃目が来る。
うぉおおおおおお! 明日のために! 明後日にむかって打つべし!
よし、外れた! 今度はかすりもしなかったわよ!
フフフフ、いままでよくもやってくれたわね。ここからは私のターンよ。
アンタは私の力を知らない。この未知の恐怖を前にして、アンタは耐えられるかしら。
ニコニコガンマぷらすにて漫画版「タナカの異世界成り上がり」の第二話前半が追加されました。
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