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『風塵瀑布の術――』
生徒会長の目の前にある地面が吹き飛んだわ!
まずは生徒会長が先制攻撃をしかけたようね。舞い上がった砂塵がまるで生き物のように悪魔の上まで伸びていって、ヤツの頭上に降り注いだの。
……。
なんという嫌がらせ! たしかにすごい技だけど、技をかけられた側はウワーってなるだけで、とてもダメージがあるとは思えないんですがね、会長様。
と思ってたらあんちゃんが素早く動いていた。相変わらず信じられない速さで走り抜け、いつのまに取り出したのか刀を片手に悪魔の背後にまわる。
ああ、ただの目くらましだったのか。
まあ、そうだと思ってたけどね! フフン。本当よ! 私が思った通りだといったら、思った通りなのよ!
そんな言い訳をしている間もなく、あんちゃんは悪魔の背後から切りつけた。
「なに!」
うほっ! すり抜けた。これはびっくりだわ。フィクション作品なんかでよくある現象だけど、リアルで見ると新鮮ね。
「どうなってやがんだ! こいつの身体は」
あんちゃんはあきらめず何度か切りつけたけど、まったく効いてないみたいね。悪魔は腕を組んだまま余裕の態度よ。
「吾次郎! さがれ!」
おっ、続いておっさんたちが動いたわ。会長のパパンもいっしょに悪魔を取り囲むような位置をとっていた。
さすがにこういう状況では協力するのね。感心感心。
それにしてもあんちゃんの名前はゴジローだったのか。もはやジゴロとしか思えない。私のなかであんちゃんのアダ名はジゴロあんちゃんに決定したわ。
『旋風縛鎖の陣――』
おお! すごい! 竜巻よ! 竜巻!
実に年季が入った芸だわ。さすがおっさんなだけはあるよ。
で、肝心の悪魔さんの様子なんだけど、竜巻のせいでよく見えない。でもおぼろげにみえる感じから、相変わらず余裕の態度で突っ立ってる気がする。
もしかしてこれはマズい状況!?
『どうした? この程度で終わりなのか?』
ガーン! やっぱり全然効いてなさそう。これはそろそろ撤退を考えなければならないようね。
ヘイ! ラカン! そろそろコドモはオヤツのジカンね! いっしょにオテツダイサンのところにネダりにいこうYO!
「冗談言ってる場合じゃない」
クッ、真面目っ娘め。冷静に返しやがりますね。というか冗談ではなく本気だったのだけど、それを言うと冷たい目が返ってきそうだから言わないでおこう。
それにしてもこの状況、いったいどう切り抜ける!?
「これでも喰らいやがれ!」
ジゴロあんちゃんがおっさんズの輪に加わってなんか叫んだ。あえていうと絵面が暑苦しいわね。
うわっ! なんか竜巻がパチパチいって光を帯びてる。ジゴロあんちゃんお得意のビリビリか。
物理攻撃が効かない相手にこれはいけるか!?