54
何だかんだで里での生活にもなじみ、会長の家を我が物顔で闊歩するのも当たり前となった昨今。ときおりやってくる客人の私を見る目が気になり始めた。
アレは敵意? ひょっとして会長が言ってた分家筋の連中ってやつかしらね。
彼らと話し合いをするといってたけど、私のいない場所で行われているらしい。私はでなくていいんですかねえ。
まあ、敵意があるみたいだし、今はお互いあまり顔を合わせないほうがいいのかもしれない。あとは会長たちの手腕に期待するしかないわね。
でも、いまだ客人の敵意があらわなのをみるに、あまり話し合いは進んでないようだけどさ。もっと私のためにがんばって! 会長!
そんなわけで食っちゃ寝の合間にラカンと修行し、ラカンと遊ぶ毎日が続いていた。
え? もっとまじめにやれって? やってるわよ。真面目に工作活動を。
そう……、ラカンの好感度をアップさせる懐柔工作をね。
そのかいあってか、今日は例のお宝探索である。
デュッフッフ、ついにこの一族にまつわる闇の歴史があきらかとなるのね。
ラカンがカギを開け、木造の牢が不気味な音をたてて開かれる。
まずは事件の痕跡を見つけなければね。でもそれには所狭しと置かれている木箱の類が邪魔ね。こいつらはあとで物色するとして――。
「それはダメ」
むう、とりあえず動きずらいので表向きの理由どおり、整理整頓お掃除フキフキでも始めましょうか。
こうして私とラカンは倉庫代わりとなっているこの牢の清掃を始めたのだった。
つまらん……。
倉庫のなかをあらかた片付け終えた私は、正直がっかりしていた。
片付けの合間に牢の中を調べてみたけど、とくに私の興味をそそるものは見つけられなかった。しょうがないと木箱のなかを物色しようとしたら、ラカンに止められるし。
私は腰をおろすと木箱に寄りかかって身体を休めた。
ふう、どうやら今回の探索はハズレだったようね。どうやらこの一族の闇は私が思ってた以上に深いらしい。
「……」
なんだかラカンが抗議の眼差しで私を見ている気がするが、きっと気のせいだろう。
私はボーッとして疲労感が抜けきるのを待った。
『――』
ん? なんだ? なにか人の声のようなものが聞こえたような気が。
「べつに何も聞こえない」
気のせいか。どうやら思ってた以上に疲れているらしい。私は目を閉じて身体の力を抜いた。
『――』
ほら! やっぱり何か聞こえるわよ!
「シッ!」
ラカンは私を黙らせると目を閉じてしまった。お? 超感覚的知覚能力の発現ですか? これはファンタジックな事件の予感!
しかし私が期待していたような答えはかえってこなかった。
「なにか争うような音が聞こえる」
静かに扉に忍び寄るとラカンは外の様子を伺う。
いや、私が聞いたのはそんなんじゃなかったような気がするんだけど。