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ひそかに豪華な昼食を期待していたのだが、いたって普通の食事だった。あえて言うならジャパニーズフードそうめんだった。うむ、うまい。
しかしこれではいささかタンパク質不足だと言わざるを得ないだろう。
そこで食事の後、厨房に案内してもらい手早くプロテインドリンクの準備。そしてそれを一気飲みした。ゴキュゴキュゴキュ……。
プハー! やっぱりこれがないと満足できないわね。
ただ、厨房の入り口からひっそりとこちらを覗き見るラカンの視線のせいで居心地悪い。飲みたいのならそういいなさい。こちちへカモーン。
……ラカンは静かに立ち去った。
そして午後の生徒会の集まり。
たぶん生徒会の仕事らしきものをやっているんだろうけど、部外者の私にはよくわからないわ。まあ、私は生徒会の仕事なんて手伝う気もないし、ここにいる必要はないよね。
というわけで私は同じく仲間外れのラカンを引き連れて部屋を出た。
そしてやってきたのはこの屋敷の前にひろがる大きな庭。今の私はラカンから忍術の基礎を教えてもらおうとテンションアゲアゲ状態よ。
そう、これこそが豪華客船で世界を巡る旅を諦めてまで、この山奥についてきた私の一番の目的である。
ママンから合宿の話を聞きラカンに電話をかけると、電話を代わった会長から私が危険な状況にあることを説明された。
エドモンドの件でなにやら難癖をつけてる連中がいるそうで、この間の危険なあんちゃんもそのうちのひとり、というか代表格なんですって。
そしてその連中が一番面白く思ってないのがどうやら私という存在なのだそうな。なぜに!?
なんでもそいつらは相当な自信家たちのようで、私に助けられたというのが気に入らないらしい。酷い例だと私とエドモンドがグルだったのではと疑ってる話まであるそうだ。なんでそうなるのよ! 彼らがいうには、私が風魔衆の秘術を狙っているとかなんとか。そんなの知らないわよ!
でもこれはアレね。エドモンドの置き土産の件は絶対ばれないようにしないと、ひどい誤解に発展しそうだわ。気を付けないとね……、ってこれフラグじゃないからね!
それで今後はそいつらがちょっかいを出してこないよう、会長たちが私を警護してくれるそうなのだが、ここで問題が生じる。
どうやらこの夏休みに、会長たちは合宿と銘打って呼び出しに応じるらしく、その間の私の安全が保障できないとさ。
それでこの際いっしょにいって、そいつらと話をつけてしまおうというのが会長の提案である。
正直めんどくさいと思った。
ここは無理やりママンについていき、豪華客船で大海に出てしまえば問題ないような気もしたけど、相手は忍者だしなあ。船に潜り込まれて、あっというまに逃げ場なしのアビスモード突入というのも怖い。
そこで私は会長に飴を要求した。忍術を教えてほしいというお願いを。
これには会長も自分たちの技を教えることはできないと渋った。しかし私も引き下がらなかった。
だいたい私に会長たちの忍術は必要ない。私の望みは私の魂に刻まれたエドモンドの秘術を使いこなす術である。
エドモンドは言っていた。魔術も忍術も術理は違えど、奇跡を起こす源泉は同じく神の法であると。
魔術を知るあてのない私にとって、忍術がどうやって超常現象を起こしているかというのは唯一の手掛かりといっても過言ではないだろう。
私は忍術自体はいいから、忍術が超常現象を起こす仕組みだけでも教えてほしいとねばりにねばり、この要求を押し通した。
というわけでラカンからいろいろ教えてもらおうと張り切っているのよ。デュッフフフ。