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「……まずいわね」
ラカンとの距離はかなり空いてしまったようだ。教室を出た私は猛ダッシュで玄関へと急ぐ。
捉えた!
ラカンはちょうど下駄箱から靴を取り出すところだった。
ヤツがイケメンからのラヴレターを受け取るなんていう、うらやまけしからんイベントが起こってないことをしっかりと確認した私は、ラカンが立ち去るのと入れ替わるように自分の下駄箱を確認する。
ああ、わかっていたさ笑いの神よ。私においしいイベントなんて起こらないってことはな。改宗してやる。改宗してやるぞぉおおお!
おっとイカンイカン。目的を間違えるところだった。今はラカンを追わねば。
ラカンが校門を出る前に後方三メートルの位置取りに成功した。これは第三者から見てギリギリ一緒に下校していると認識される絶妙なポジションである。
私は乙女坂をくだる間もこの間合いをキープし続けた。
クックック、うまくいったぞ。なんとかウサギ小屋行きを回避した。明日以降もこの調子で周りの目をごまかし続けるとするか。
私は感謝するためラカンの後ろ姿に目をやった。
なにっ! ラカンの姿がない! 馬鹿な! いったいどうなっている!?
私が物思いにふけっている間、ヤツに意識を向けていなかったのはごくわずかな時間でしかなかったはず。どうやって私の乙女結界から抜け出した?
私は明日に向かって駆け出す。
違った。ラカンを探すため駆け出す。
まずいまずい。
ここで下校ルートを巡回するクソ真面目な教師なんかに見つかってしまったら、全てが終わる。
私はたとえボッチだとしても、窓際で読書に勤しむ高嶺の花くらいのイメージはキープしていたはずだ。そんな完璧美少女チックな私が、鉄仮面をかぶってヨーヨーを振り回すような不良少女のイメージに上書きされてしまう! それだけは避けなくては!
クッ、この辺りは住宅地だ。まさかラカンは自宅が学校の近所で安全だから一人で帰ったというオチではないだろうな。
それでは私だけが悪者になってしまうじゃないか。ゆるさん……ゆるさんぞラカン! 私を罠にはめたな!!
私は普段鍛えているハムスターのような強脚を活かし、住宅街を縦横無尽に駆け回る。
いない……、どこにもいない!
やはり私の推理は正しかったのか。すでにラカンはこの近所にある自室でくつろいでい
るというのか。
「これが敗北というものなのね……」
なんてカッコつけてる場合じゃないねぇええええ!
どうすんのよコレ。まだ学校のご近所さんなのよ。
先生にみつかったらヤヴァイってもんじゃないわ。それどころか知り合いの生徒に見つかってもまずいことこの上ない。そのままウサギ小屋エンドに直行もありうる。
私はBボタンダッシュを繰り出し我が城への帰還を急いだ。
いや、急ごうとした。しかし、ここで奇妙なことに気づく。
活動報告を更新しました。
10月23日発売予定の「タナカの異世界成り上がり」第五巻の実物を紹介しております。
興味のあるかたはのぞいてやってください。