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まる一日身体を休めた翌日。
痛みは完全にひいたわけではないが、動くのに支障はないくらいに復活できたわ。
フッ、さすが私ね。伊達に普段から鍛えてはいないのよ。
それよりも愛娘が一日中寝込んでいたというのに、なんの心配もしない我が親はなかなか豪胆だと言わざるをえない。まあ、うるさくアレコレ質問攻めになるよりマシだけど、少しはいろいろ考えたほうがいいんじゃないかしらねえ。父よ母よ。
まあアレだな。私が超絶完璧主義すぎる美少女高校生なのが罪だというのならば、あまんじてそれをうけいれよう。いたしかたなし。
しかし数日後、我が親がブッとんだ親であるということを再認識させられるとは思ってもみなかったわ。
それは晩御飯時、珍しく母の手料理を食べているときの話である。
「ああ、そうそうダナコちゃん。夏休みはパパと二人で世界一周旅行に行ってくるから、お家のことはお願いね」
なぜアナタまでその呼び名を使っている、母よ。いや、そうではない。ゴールデンウイーク前も旅行に行っていたが、ちょっと遊びまわりすぎではないか? いやいや、そうでもない。なぜに私を置いていく。私もたまにはつれていってほしいのママン。
「だめよ。ダナコちゃん合宿があるんでしょう。生徒会長さんから連絡があったわよ」
は? なにを言っているんだ? 合宿?
なんだ……、なにがどうなっている。なぜ生徒会長からそんな話が……。
私は携帯を取り出し会長の妹であるラカンに連絡をいれた。フッ、すでに電番は交換済なのだよ。
そうして知った驚愕の事実。なぜか私の知らぬところで、私の夏休みは生徒会長のご実家でやっかいになる方向に話が進んでいた。
ラカンの言葉短めな説明は、夏休みを控えひそかにウキウキしていた私を直撃する。
私は即抗議したのだが、電話を代わった会長の説明に納得せざるをえなかった。
クッ……、なぜこんなことに……。
そんなふうに悩みぬいている私の目に母の姿が移った。その顔はニコニコ顔である。
チッ、旅行のことで頭がいっぱいというわけか。自分たちだけ楽しもうなどと天がゆるしても私がゆるさないわよ。だいたい一般家庭のくせに世界旅行とか分不相応なのよ!
「ふふーん。今回の旅行はお友達が貸し切った旅客船でまわるから、ほとんどタダなんだもーん。実はこの間の旅行で知り合ったかたととっても仲良くなってね。そのひとがすっごいお金持ちだったのよ」
なん……だと……。なんという豪運。なんといううらやましさ。せめてその大金持ち様を私に紹介しろ! その知り合った人はもちろんイケメンなんですよね? ついでに私みたいな大和撫子が好みだとかないんでしょうかねえ。