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翌日、相変わらず私の身体は悲鳴を上げていた。いや、筋肉痛が奏でる相乗効果のおかげで、昨日よりひどいことになっていたというのが正しいだろう。
いやあ、今日が休日でよかったわ。
私は流動食がわりに朝のプロテインを飲んだあと、ベッドの上で横になっていた。
今日はこのまま大人しくしているしかなさそうね。まあ、それでも別にいいか。調度昨日に推測した件について少し考えたかったところだし。
私が思うに、あの不思議現象はエドモンドの置き土産に原因があると考えている。
私たちトレーニーは筋肉を鍛えているが、同時に神経も発達している。
初心者が筋トレを始めたばかりのころ、扱えるダンベルの重量が急速に伸びるのは筋肉がついたわけではない。運動をしていないほとんどの人は、自分のもつ筋肉を十分に扱えない状態にあるのである。
だからこの時期に発達するのは筋力というより神経系なの。身体が筋肉を十全に扱えるよう神経が適応していくのである。
自分でいうのもなんだが筋肉愛好家としての私は初心者を通り越し、もはや中級者に片足をつっこんだくらいのレベルであると思う。つまり神経系も十分に発達しているといえるだろう。
エドモンドの置き土産――神経へ干渉する秘術は、ある意味私と相性がいい術だったのではないだろうか。
ならば何故、いままで全く成長の兆しが見えなかったのか。どうして昨日の戦いに限って術が発動してしまったのか。
その答えはすでにあった。以前のエドモンドとの戦いのとき、私に術が効かなかったのと同じことである。
私はエドモンドとの戦う前に、少しでも戦いを有利に進めるためプレワークアウトを飲んでいた。これに含まれるサプリメントの効果は、興奮作用、栄養補給、血管の拡張、ホルモン分泌など様々である。これらが術の神経系への干渉を阻害したというのが私の推測だった。
そして常日頃、私は少しでも運動のパフォーマンスをあげるためにプレワークアウトを飲んでトレーニングしていた。つまりこの行為は筋力アップとしては正しかったが、術を自身にかける訓練としては間違っていたといえるのではないだろうか。
まあエドモンドの術が他人に干渉していたため、自分に干渉できるかもしれない点を考慮できなかった私に落ち度があるわけだけど。
とにかく実際、あの男との戦いは急展開だったこともあり、プレワークアウトを摂取していなかった。そのため無意識のうちに術の発動が成功し、自身の神経系に干渉することにより、一時的に潜在能力を限界近くまで酷使できたというのが私の推測である。
ふう、この推測が正しいならこの数か月間のトレーニングがむなしくなるわね。いや、筋トレで神経系も発達したはずだし、完全に無駄だったというわけではないか。自分の神経へ干渉して潜在能力を発揮できるようになっても、その潜在能力が小さかったらあまり意味はないし。自分を鍛えるという行為は必要である。
とりあえずいろいろとやることが見えてきたわね。ほとんど常習化していたプレワークアウトの使用は今後ひかえよう。
それから推測が正しいのか検証するため、神経系への干渉をいろいろ試していく必要があるわね。
まあ、まずはこの身体が回復させるのが最優先なわけだけど。