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 燃え尽きたわ……。


 私は神社の境内で仰向けに倒れていた。

 私が最後に放った左ストレート。

 男は見事にカウンターを合わせてきたの。それもギアをさらに一段階あげたスピードでよ。まさかまだ力を隠していたなんてね。

 完敗だわ。なんとか後方に飛んでダメージを逃がしたけど、どうやら私はここまでのようね。これまで私の身に起こっていた謎の奇跡が、急速に失われていくのを感じていた。

 なんでわかるのかって?

 身体中に激痛が走り始めたのよ!

 メチャクチャ痛いの! 身体が悲鳴をあげているのよ!

 ああ、無理もないか。原因もわからないまま調子に乗ってはしゃぎすぎたんだわ。あんな人間の限界を超えるような速さで動きまくっていたら、身体にガタがきて当然よね。

 失敗した……。真正面から戦うなんて私らしくないことするんじゃなかった。いつものように慎重かつ華麗に卑怯な戦法をとるべきだったわ。

 でも後悔先に立たず。もはや普通に動くことすら困難な状態よ。あとはトドメを刺されてジ・エンドか……。

 私は青空をぼうっと眺めながら、運命の一撃を待った。


 ……なかなか最後の一撃がこない。


 身体中の痛みから解放されるため、気絶するくらいの一撃を期待してるんですがまだですかねえ。やるなら早くしてほしい。

 というか正直いってちょっと眠いんですが。もう痛みを忘れるために寝ちゃっていいですかね。いいですよね?

 ――と勝手に結論をだし、瞳を閉じて眠ろうとしていたところに影が移りこんだ。


 ようやくきたか……。


 どんだけ人を待たせるのよ。早くこの痛みから解放してほしい。

 期待してそちらに意識を向けるとその人影はラカンだった。ゆっくりと私のほうに近づいてくる。


「大丈夫?」


 おいおい、ちびっ娘。これが大丈夫そうに見えるのか?

 いや、おちつけ私。痛みがひどいからってラカンに八つ当たりしてどうするのよ。とりあえず聞くことを聞いておこう。


「あの男は?」


「わからない。私が気がついた時にはいなかった」


 どうやら見逃されたらしい。私としては立ち去る前に一声かけてほしかったわ。そしたら気なんか遣わず速攻で爆睡していたのに。

 まあいい。痛みや眠気を我慢していたおかげで、気づいたことがある。これは当たりかもしれない。


「そう、……今日はもうお開きでいいかしら。疲れちゃったから」


 私はなんとか立ち上がると、痛む身体にムチ打ちながら荷物のほうに移動する。

 これはキツい。早く帰って一刻も早く横になりたいところだわ。

 ラカンは相変わらずの無表情だったが、心なしか心配そうな素振りだ。ひょっとして今回の件を気にしているのだろうか。別にラカンが悪いわけじゃないし、そんなに気を遣わなくてもいいのだけど。

 むしろ今回の件は吉事だったと思っている。もし、私の推測が正しいのなら未来に希望が見えてくるから。

 とはいえ私の身体はもう限界に近い。私はそのまま自宅へとむけて歩き出した。


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