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『魔術でお前の意識レベルを下げていたのは、私がこの身体を乗っ取るためだ。本来、お前の身体であるのだから、当然お前のほうが適正値は高い。私のほうが優位に立つには必要な処置だった』


 なるほどねえ。でもそこで不本意ながらそうせざるを得なかった的な雰囲気を醸し出されてもね。方法をとやかく言う前に、目的が他人の身体を乗っ取るためって時点でいろいろと終わってるわよアンタ。


『お前の意識を完全に消しておかなかったのは、私が戻るまでの間は最低限生命を維持してもらわねばならなかったからだ。もしお前を消してしまえば、私が使っていた元の身体のようにすぐ死体になってしまうからね』


 ああ、そうですか。アンタが以前の身体で復活できなくて本当によかったと思うわ。


『予定では私の魂が戻ったこの段階で、お前の意識を完全に消去していた。しかしお前の意識が覚醒し、術の助けもなくなった以上、この身体を乗っ取ることは不可能になった。それほどの時を待たずして、私のほうが消えることになるだろう』


 ほうほう、それはよかった。いずれとは言わず、すぐにでも消えてほしいんですがねえ。


『さて、そこでお前に質問だ。お前はこれで平穏な日常に戻れると思っているのかな?』


 ……なにが言いたい。アンタが消えればすべて解決だわ。私は勝ち組JKとしての王道を歩み始めるのよ。


『お前にはいくつかの魔術をかけておいたと言ったな。そのなかには今でも機能しているものがある。私がお前を追跡できたのもそのうちのマーカーの術式が生きていたからだ。単純なものだが、それゆえに燃費もいい。しばらくの間は機能し続けたままになるだろう』


 ……それがなんだって言うの? そんなのどうってことないわよ。もしヤバイ魔術があったとしてもすぐに燃料切れでダメになるんでしょう? 少しぐらいなら我慢してやるわよ。


『仮に機能を停止しても魔術の痕跡は残ったままだ。我々魔術師にしてみれば一目瞭然なわけだが、これが何を意味すると思うかね?』


 ま、まさか……。

 魔術師にしか見えない文字で「私はノーパンです」とか顔にイタズラ書きしたんじゃないでしょーね! 消しなさい! 今すぐ消しなさいよ!


『お前は間違いなく私たち魔術師側の人間だと認識される。そのうえお前にかけられた魔術は大したものではないが、私オリジナルのもので珍しく見えるだろうし解析も難しい。おそらくかなりレベルの高い魔術師だと思われるだろう』


 つまり華の女子高生にして三十路処女、いやレベルの高い魔術師ということはそれ以上だと認識されるのか……。なんという嫌がらせ!


『我々魔術師には変人が多い。自分で言うのもなんだが、私が善人に見えるほどの狂人揃いだよ。そんな輩がお前を見つけた時、いったいどうなるかわかるか。我々魔術師にとって、知識を得るのに力ずくなんてのはごくありふれた話だ。今後はお前の運が試されることになるだろうな』


 なんだとぉおおおお!

 ボッチ脱出のため幸運を消費しまくった私に、いったいどれだけの運が残ってると思ってんのよ!


『せいぜい身の回りに気を付けることだ。もっとも魔術もまともに使えない小娘がどう足掻いたところで、行き着くのは悲劇的な最期だと思うがね。フフフ、これをもって私のささやかな復讐の説明を終わりとしよう』


 ちょっと待てい! 地獄に落ちたくないなら、いますぐ善行を行うのよ! というわけで魔術を解いてください。お願いします。


『そうだな。お前の敵としての復讐は終わったわけだが、このままでは研究者としての悔いは残る。私が得た世界の真理、それをもとに作り出した秘術は世界に名を残すに足るものだった。惜しいことをしたよ。そこでお前にささやかながらプレゼントをあげよう。お前の魂に私が得た神の知識を刻んでおく。魔術を学び秘術の謎を紐解けば君の助けとなるだろう』


 え? なに?

 ひょっとして敵だったヤツがデレて味方になってくれる的なノリなのかしら? やっぱり世界は私を中心にまわっているんだわ。私が主人公なのよ。


『しっかり励んで私の秘術を世界に知らしめるがいい。もっとも私の秘術はただの魔術など及ばぬほど魔術師がほしがるものだ。金塊を背負った小娘に盗賊が殺到する情景が目に浮かぶよ、フフフ。それではさらばだ』


 ちょっと待てぇえええい!


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