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帰宅した私はいつも通りのサプリメントづくしな食事をとった。
疲れたので今日はトレーニングを休もう。健全な肉体はトレーニングと食事と休息のバランスが大事なのよ。だから今日の休息は正義。
ということでしばらくの間、無駄に時間を過ごしたあとお風呂に浸水、ブクブクブク。
我ながらなんとサービス精神あふれる美少女であることよ。全国一億二千万人のファンもきっと納得しているわね。
お風呂上りにまたまた小休止。本来ならネットの世界を徘徊するのだが、今日は本当に疲れている。
このまま眠りにつくとしよう。ぐーぐー。
『――おい』
ぐーぐー。
『おきろ小娘』
……誰だ? 美少女の美しい眠りを妨げるのは。
『夢のなかでも寝ているとは、なんとも珍妙な娘よ』
あんだとゴラー!
――と目の前にいたのは憎いアンチクショーことエドモンド藤鬼さんでしたとさ。なんですと!
『どうした? 驚きで言葉も発せられないか?』
うーん……、これは夢? とりあえず見なかったことにして寝よう。ぐーぐー。
『寝るな小娘。それとも素直に私に身体を明け渡すとでもいうのか』
ノォオオオオ!
夢かもしれないがそれだけはノー!
クッ、ひょっとしてコイツ本物なのか!? 魂だけになって消滅したんじゃなかったのか。
『残念だったな。この通り私はいまだ健在だ。それよりも我が秘術からよく逃げ出せたな』
いやいや、逃げ出せてないよね? 思いっきりストーキングされてんじゃん私!
『ふん、私の魔術をあまくみるな。お前にはいくつかの魔術をかけてあったのだ。どれほど遠くに逃れようとも私の追跡から逃れることはできない』
ストーカーこえぇえええ!
やばい。ここに頼れる仲間はいないのよ。もともとボッチだった気もするが気のせいだわ。とにかく誰もいないったらいないこの状況はまずい。
『――とはいえ、しょせん今の私にできるのはここまでだ。お前が意識を取り戻し、あの場を離れた瞬間に私の敗北は決していた』
なぁんだ。脅かしてくれちゃって。
そうとわかれば怖くないわ。ここは私の夢のなかだし思いっきりブイブイ言っちゃうわよ。
『だが、ただの小娘に負けてしまったというのでは、死んでも死に切れん。というわけで最後に私の嫌がらせにつきあってもらおうか』
むぉおおおお! なんて嫌なヤツ!
そしてしつこい! そのままあの世にいってお休みになってくださいませ。