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アイタタタタタ。
クッ、やられたわ。まさか防御を無視してまで、私の逃亡を阻止してくるだなんて。
「なかなか手こずらせてくれる。だがそれももう終わりだ」
なにぃいいい! なぜお前がこんなにも近くにいる!
どうする。どうする。どうする。
さっきの爆発で思いっきり吹き飛ばされた私は、体育館中央まで押し戻されていたようで。それはつまり、エドモンドの間合いに入ってしまったことを意味していた。
とにもかくにも距離をとるしかないけれど、蓄積された疲労とダメージで身体が重い。
「グッ!」
なんてことを考えていたら本当に重くなった。これが神経干渉の魔術か!?
これはすごい。本当に重くなったように感じる。
ぐぬぬぬぬ。こんな面白い魔術を使えるなんてうらやましい。
なんて余裕こいてる場合ではなかったわ。
ダナコ絶対絶命。このまま私は身動きもとれず……、とれず……、とれず?
あれ? 押しつぶされるような形で地面にはいつくばってはいるんだけど、なんだかそれほどでもなくない?
たしかに重いんだけど、普段筋トレしている私的にはごくありふれた負荷くらいにしか感じない。
うーん、これ無理すれば結構動けそう。
まさか日々の努力が実を結んだとか? いやいや、筋トレしていなくてもこの程度だったら動けるはず。
でも会長たちの様子をみるに、私とは比べ物にならないくらい苦しんでる。私だけ何かが違う。
魔力切れとか? いや、エドモンドの態度からまだまだ余裕がありそう。
どうなってるんだろう?
まあいいわ。これは私にとっては好都合。このまま動けないふりして隙を伺おうっと。
「さて、ようやく片が付いたな。新しい素材も手に入ったことだし早速実験にとりかかるとしようか」
おいぃいいいい! 新しい素材ってもしかしてもしかしなくても私たちのことだよね。
ちょっと落ち着こうよ。ついさっきまでバトってたんだし、ここはしばらくのんびり休憩しましょうよう。
と言いたいけど言えない。わざわざこの奇襲できるかもしれないポジションを捨てるわけにはいかないんだよね。
とりあえず悔しそうに睨んでおこう。ギロリ。
「私たちを殺して、死人に変えようというわけ」
「クククク、もしかして私がなにか目的があって――。そう、例えばこの街を支配するために死人を、戦力を増やそうとしているとでも思ったのか」
お、なにやら会長とエドモンドが話を始めた。いいぞー、もっとやれー。そんでもって私のために時間を稼いでちょうだい。
「死人が増えたのはただの結果にすぎない。私の望みは昔から変わらずただひとつ――」
おっ、なんかおもむろにかぶっていたローブをはずして素顔を晒しましたよっと。
「世界の真理――神の法を知ることだ」
知らない顔だわ。あえて言うなら思っていたよりも若いわね。たぶん歳は私たちと変わらないくらいよ。
うーん、かなり普通ね。せっかく素顔をみせてもらってなんだけど、たいしたリアクションはできそうにないわ。
あれ? 周りはそうでもないみたい。なんだか会長もすごく驚いてる気がする。
「そんな……。エドモンドではない……、貴方はいったい誰!」
「クククク、私は正真正銘エドモンド本人さ。ただしこの肉体は最近頂いたものだがね」
なんかやばい。私は話がやばい方向に向かっている気がして仕方がなかった。