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怪しいわね……。よし!
「ラカン! 遠距離から攻撃! アイツの間合いに入っては駄目よ!」
問題は弾に限りがある点。ラカンがどれだけ苦無を持っているかがカギね。この際手りゅう弾でもいいわよ。
「させんよ」
またもやエドモンドの口元が動いた。やはりセオリー通り呪文を唱えているのかな。くうーっ、魔術うらやましい!
なんて言ってる場合じゃなかった。
「何か来る! 散って!」
私とラカンは左右に飛びのく。
次の瞬間、空間が爆ぜた。その衝撃をうけて私は思いっきり転がりまくった。アイタタタ。
なんとか立ち上がって確認したところ、ラカンとエドモンドが絶賛戦闘中だった。
ラカンはなにやらいろいろ投げつけているようだ。隙だらけだった私のために敵をひきつけてくれているのかもしれない。ええ娘や。
ならばこちらもそれに応えなければね。
私はリュックからパチンコを取り出す。よりカッコよく言うのならスリングショットよ。
人に向けて撃っちゃダメだけど、今は非常事態だから問題あるけど問題ない。エドモンドの背後から慎重に狙い撃つ!
しかし、私の渾身の一撃は甲高い音とともにエドモンドの間近で弾かれた。
そんな……。まさか自動迎撃型か!
「ほう、油断ならんな」
エドモンドがゆっくりとこちらに顔を向けた。
くそ! なんだその余裕の態度は。とりあえず次弾を装着してスリングショットを構えたがまずい。攻略法が見つからない……。
ここでラカンが動いた。
エドモンドが私に注意を向けた隙をついて大きく跳躍。小刀を構えての突撃である。
遠距離では無理と即座に判断したのだろう。おそらく魔術を受けることも覚悟しての捨て身の攻撃だった。
「それは駄目!」
私は叫んだ。しかしもはや手遅れである。
ラカンは空中で突然力が抜けたように体勢を崩してそのまま墜落。その身体が大きく弾んで床を転がった。
「どうやら貴様は我が秘術に気づいたか」
そう、コイツは重力操作なんてやっていない。本当に重力操作ならラカンが最初に投げた苦無は弾くまでもなく墜落し、会長たちのように床に転がったはずよ。
その後に行った遠距離攻撃も、コイツはそのことごとくをわざわざ弾いて防いでいた。
それに最後のラカンの様子。飛躍した彼女の身体の軌道に不自然なところはなかった。にもかかわらずラカンは様子はおかしくなり、そのまま墜落。ごく自然に転がった。
これらの事象から導き出されるのは――。
「神経への干渉」
私の答えにエドモンドの口元が大きく歪んだ。