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競技場の扉の前で私たちは立ち止まっていた。旧校舎内への入り口は競技場を通った反対側にあるのかな。
「……いるみたいね。この中に」
会長の顔がいつもより三割増しに真剣な感じに見えた。
いよいよ遭遇戦のようね。私としては事が終わるまで外でまっておきたい気分なのだけど。
なぜなら私がメインで使用する秘密道具はワイヤー系のものが多いから。競技場のような広い空間ではあまり向かない装備なのよね。
自分だけ抜けさせてもらいます――なんてこと言える勇気が私にあるはずもなく。私はチーム生徒会がなにやらゴソゴソやってるのを眺めていることしかできず、ボーっとしていた。
突然、ラカンに手を握られ引っ張られる。なにやらみんなも急いで階下へと降りていく。
――爆音。
ぐぉおおおお! 耳が! 耳がぁああああ! なんなのよいったい? いったいなにがどうなってるのよ!
私は心の中で絶叫をあげていた。
チーム生徒会の連中はというと、階上を静かに見守っていた。
「うまくいったようね」
生徒会長のお言葉を聞いて私もそちらを見てみると、閉ざされていた競技場の扉が吹き飛んでいた。
おいぃいいいい! アンタたち何やってんの!
扉は開くものなのよ! 爆破するもんじゃないのよぉおおおお!
ああ、そうか。扉が開かないように塞がれていたのか。なるほど……。
いやいやいや、だからってなんで爆破。
なんで学生のアンタたちが爆薬とか持ってんのよ! 絶対おかしいでしょ!
そんな私の心の抗議もむなしく、チーム生徒会は競技場へと向かう。
競技場のなかは薄暗い。板張りの窓の隙間から漏れる光でなんとか状況が把握できる。お昼でよかったね。
ってそういえば、流されるままここまで来たけど、午後の授業はいいんですかねえ。
そうだよ! 生徒会とは生徒の模範であるべきだと私は思うのよ。だからこんな探検ごっこはやめて学生の本分に戻りましょう。そうしましょう。
と言いたいけど言えない。笑わば笑え!
――と現実逃避しても現実が変わることはなく、競技場のなかでワサワサ蠢くゾンビたちが否が応でも目に入ってくる。
「なかなかやって来ぬので、なにかあったのではないかと心配したよ、風魔衆」
蠢くゾンビたちのなかで一人だけ違う様相のやつがいた。真っ黒いローブに身を包んでいて実に怪しい。薄暗いのでどんなやつなのかよくわからないけど、声から男だということだけはわかった。
ところでフウマ臭ってなんですかね? 私はフローラルな香りのはずなんですけどね。
「東方魔道連四天王――エドモンド藤鬼。あなたを拘束させていただきます」
会長の言葉にチーム生徒会が一斉に構えをとった。
つまりあれが噂のエドモンドさんか。どうやらレアモンスターではないようね。