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敵ゾンビは十体程度。鉄骨に張り巡らされた乙女結果のむこうで私たちにせまろうともがき続けていた。
「ラカン。私が今やった作業、アナタにもできる?」
ラカンは黙って頷いたが、ちょっと心配だったのでテストしてみる。
おおう、結び方も完璧だった。むしろ私よりうまいかもしれない。クッ、やるわね。
「アナタの身軽さにかけさせてもらうわ」
私がゾンビたちの目を引いている間に、ラカンには階段の外側鉄骨を伝って下に降りてもらう。そしてそこにここと同じく乙女結界を張ってもらうのだ。これで奴らは結界に挟まれて身動きはとれまい。
私は秘密道具の入ったリュックをラカンに渡す。ラカンはすばやくリュックを背負うと準備完了。
よし、ではやるわよ。
両足はやや肩幅より広く、膝は約九十度に固定。両手を前に出し、こっちこいよな感じで振り続ける。
ヘイヘイヘーイ! ピッチャーびびってる! びびってるぅう!
私は派手なジェスチャーで盛大にゾンビたちを煽りまくった。ラカンの動きまで止まってしまった気がしなくないがとにかく煽りまくった。
スタートに出遅れたラカンであるが、横目で見ているとスルスルと降りて行ったようだ。さすが羅漢拳の使い手。身軽さでは到底かなわないわね。
しばらくの間、煽り続けていたが膝が疲れてきたのでやめる。膝は大事だからね。
階段脇から頭を出して下の様子を見ると、すぐ下でちょうどラカンが結界を張り終えたところだった。
うまくいったようね。それじゃあ私も脱出しますか。
私は階段横に身を乗り出すと鉄骨をたよりに下へ降りていく。ちょっと高くてビビりましたわ。オホホホホ。
ラカンはかなり近いところに結界を張っていた。あぶないなー。作業中に気づかれて襲われたら試合終了なのよ。
一応、ラカンに注意しておいたが、すばやくできる自信があったしこっちのほうが都合がいいと言われた。
まあ、たしかにそうだけどね。最終手段でゾンビが階段横から飛び降りる可能性もあったし。そうなると高いほうが都合がいい。
この高さならやつらも相当なダメージをうけるだろう。骨が折れたり、間接を壊したりすれば、いかな不死身のゾンビでも動けまい。
とりあえず大量のゾンビの封印は完了した。私たちは階段を下り地上へと降り立つ。
見上げると非常階段の途中でゾンビたちがどうすることもできず、うろついていた。
ああ、なってしまうとなんだか哀れね。あっ、一体落っこちる。
派手な音をたてて一体のゾンビが地面に叩きつけられた。やはり損傷が激しいのか立ち上がれないようだ。その場でもがき続けている。
うーん、それにしてもコレどうしようか……。
そんな風に考え込んでいると繁みのほうから物音が。
なん……だと……。
増援なのか? これだけのゾンビを投入しておいて、まだ予備戦力があるというのか。
音の数からすると五体……いや、もっとか。
私はゾンビたちの勢力を侮っていたのかもしれない。
緊張の面持ちで待ち構えていると、繁みから現れたのは生徒会長たちだった。