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ゾンビを見事撃退した後、再びゾンビが襲来することはなく、いよいよゴールデンウィークを迎えようとしていた。
あいかわらず勝ち組JKへの目途はたっていない。そういう意味で今回の大型連休は不毛な時間になりそうだわ。
おのれ、ゾンビども。私の貴重な時間を奪いやがって。あの失われた時間があれば、イケメンとのなりそめイベントくらいこなせたかもしれないのに。
いや、もう過去を振り返るのはやめよう。未来をみるのよダナコ。最後に勝ち組JKになれればそれでいいのよ。
というわけでこれからは未来志向でいこう。そうするとラカンとのつながりができたのは大きいわね。なんといっても彼女はあの美少女生徒会長様の妹だ。これで生徒会長との関係も深められれば、おこぼれを頂戴できるかもしれない……。
イケる! これで私も勝ち組JKよ!
というわけで私はまずラカンとの関係を深めていこうと思う。
「どうしたのラカン。早く座りなさいな」
「……」
私たちは仏宇野高校旧校舎の裏手。非常階段を椅子代わりに昼食を始めるところだった。
ここは私がかつてのボッチ時代に見つけていたプライベートスペースである。この場所で食べるボッチ飯がどれほどしょっぱかったことか。まあ、いまではいい思い出よね。
今回、ラカンを引き連れてここにやってきたのは、脱ボッチリハビリもかねて、元ボッチ同志で昼食をとろうという私の粋な計らいである。さすが私。
とりあえず私はリュックから2本の水筒を取り出す。
まずは一本目のBCAA。みんな大好きアミノ酸、筋肉の友達BCAAである。これは空きっ腹にかなり効きますわ。アミノ酸が一気に吸収されていくような感覚を覚える。プハァ~。
そして続けてプロテイン。粉飴入りの重量感ある液体が腹にずっしりきた。これは体重アップしますわ。ゲプ~。
しかし、これでは食事として少々味気ない。
私は最後におにぎりの王様。梅干しおにぎりで渋くキメる。モシャモシャ。
「……」
この優雅な昼食を見て、ラカンは自身の食事もとらず突っ立ったままだった。
まったく、この娘は……。これだからボッチは困るのよね。もっと協調性ってものを持ってもらわないと。
私があきれているいっぽう、ラカンはようやく私のとなりに腰をおろし食事を始めた。可愛らしい小さなお弁当箱には、少ないながら数多くのおかずがきれいに陳列していた。……ゴクリ。
それにしてもこんな少ない量で足りるのかしら。
小動物を思わせるしぐさで、モキュモキュ食べ続けるラカンの様子を見守りながらそんな心配をしてしまう。
ラカンは同級生のなかでもかなり小柄なほうである。武術家として相当な域に達してはいるが、身体のほうももう少し大きくなったほうがいいと思うの。
ここは私のサプリメント知識を生かすしかないわね。
まかせておきなさいラカン。
親友の私が貴方を興福寺十二神将にも負けない立派な筋肉に導いてやるからね。