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クリスティーナ!
息は!? まだある。でも意識はあるのかないのかわからないような状態だわ。立ち上がる様子もなく、ただ呆けているだけ。
これはやられたわね。
精神攻撃はクリスティーナも警戒していただろうし、魔術で一応対策をしていたはず。その彼女をまさか一瞬で無力化するなんて。
相手の力を甘くみたつもりはなかったけれど、想像以上の力ね。戦いの未熟さを突いたとき、一気に殲滅できなかったことが悔やまれる。やつに考える余地を与えてしまったのは失敗だったわ。
そう、私たちの戦術は今や完全に潰された。ここから打開する芽はないわ。
「さんざん手をやかされたが、これで終わりだ」
コイツ……、もう完全に落ち着きを取り戻したようだわ。
後は私を倒して逃亡、体勢を立て直してテロ再開って感じかしら。ヌゥーレ協会に残っている能力者を傘下に収めれば、再び大勢力にのし上がれるだろうしね。
「無能力者のお前など放っておいてもいいが……」
ほうほう、なかなか優しいわね。遠慮なくこのままフェードアウトしてくださいな。
「散々コケにしてくれた礼だ。きっちり受け取ってゆけ」
やつらの周りの景色が歪んだ。それほど強力な攻撃をする気か。
私は徒手空拳に構えた。
「まだ抵抗する意思があるのか。無駄なことを。最後くらい大人しく観念したらどうだ」
ふん、私は諦めの悪さに定評のある女なのよ!
それにね……。たしかに私たちの策は敗れたけれど、私個人の策はまだ残されているわ。
「強がりも大概にしておけ。見苦しいぞ」
突風が私の横を通り過ぎた。強力なサイコキネシスで私を殴りつけようとでもしたのだろう。
でも残念、その攻撃はお爺ちゃんの事案が発生したときに対策済よ。
操られて意識がないはずのお爺ちゃんの顔に、焦って言い訳をする幻想を見た。
HAHAHA、こやつめ。
なんて遊んでる場合じゃないわね。
「お前……、いったい何をした?」
おっ、困惑しましたか? そのまま混乱しちゃってどうぞ。