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フッフッフ、この場所は風魔衆の庭なのよ。罠の一つや二つ仕込んであって当然じゃない。もっともここで待ち受けると決まってから、たくさん仕込んでおいてもらったんだけどね。
「これはひどいわね」
クリスティーナがそう呟いた。
たしかにちょっと破壊力がありすぎたかしら。でもどうせ相手が超能力で守りを固めるだろうから、威力は高めにしておいてもらったのよね。強烈な衝撃で戦闘不能にするのが目的だったから。
「貴方のやり方がひどいって言いたかったんだけど」
何言ってんのよ。むしろファインプレーとしか言いようがないでしょう、これは。
倒れているやつらをしっかり見てみるのね。見事に失神しているでしょうが。
被害を最小限にして最大の利益を得る。まさに妙手だわ。
「そうね。流血しているやつがたくさんいるように見えるわ」
あーあー。聞こえない。聞きたくない。
そうよ! あれはちょっと着地に失敗しただけなのよ、きっと。
そんなやり取りをしていると、またまたヤツらが現れた。今度は十人くらいか。
「おっ! お前はっ! ふっ、ふざけるなよ! なんなんだ!」
なんだか怒りの大合唱が始まったわ。怒りが天元突破しすぎて片言になってるのがある意味怖い。
HAHAHA! もちつきなよ、お前ら。私が音頭とってあげるからさぁ。それ、せーの!
なんて煽ってみたけどほとんど聞いてないみたい。戦っていたことも忘れてるように罵詈雑言の嵐だわ。
これはどうしたもんかねえ。
「まったく、貴方が煽りまくるからでしょう。どうするのよこれ」
クリスティーナが呆れたように怒りの合唱を続けるやつらを見ていた。お爺ちゃんもかつての仲間を見つめているがなんだか目が悲しそう。いろんな意味で。
まあ、ずっと戦ってるのも疲れたし、ここは休憩ってことでOK?
なんて思わぬ休憩時間を得た私たちは回復に専念していたのだけど、とつぜん大合唱がやんだ。
なんか私のことを睨んだままだし怒りはおさまっていないようだけど、さっきまでとは明らかに違う。そこには焦りのようなものが見えるわ。ということはいよいよアレかな?
「これは……、これも貴様のせいかぁああああ!」
いったい何のことかしらん? なんて惚けてみるけど隣から突き刺さるクリスティーナの視線が痛い。
フン、アイツらが甘いだけなのよ。こんな単純な手にひっかかるなんてね。