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それにしてもこんな場所で待ってるのもつらいんですけど。というか寒い。
おーい、イガグリ頭。焚火しようぜ!
「なにをまたわけのわからないことを。いいから黙って待ってなさいな」
ちっ、ノリが悪いなあ、クリスティーナは。こっちは焼き芋が食べたいってのに。
「油断せんほうがええ。クリスティーナ殿がこの街にいることは当に知れておるわけじゃし、わしの存在にもすでに気づいておろう。いつ、アヤツらが出てきてもおかしくないぞい」
ヘイヘイっと。でもねえ、待ってるコッチは寒いだけなんで、正直さっさとやってきてほしいところだわ。
そのとき風とは違う空気が震えるような感覚を肌で感じた。
そして目の前に突如現れる一人の男。
「いったいどういうつもりですかフランク会長。そんな骨董品擬きの術者といっしょにいるとは」
よく見ると男の足元は宙の上。目の前の男は空中に浮かんだまま何食わぬ顔で話しかけていたのだ。
私は驚愕で目を見開いていた。
「お爺ちゃんって外国人だったの……」
「驚くとこソコかい! 目の前に敵がいるというのに相変わらず豪儀な娘じゃ」
そんなに褒めても何もあげないわよ、オーホッホッホ!
なんて高笑いしながら私は男の注目をひくことに全力を注いでいた。となりにいるクリスティーナは先ほどから口元が僅かに動き続けている。すでにいくつかの魔術くらい準備はできてるだろう。今は味方だし頼らせてもらうわよ。
「敵……ですか。会長は本当に私たちの敵になったわけですね」
「勝手なことを。ヌゥーレ協会の目指すところに反して進み始めたのはお前じゃろうが」
お爺ちゃんの言葉もどこ吹く風といった感じである。
むぅ、これは相当自信があるのかしら。同じ能力者であるお爺ちゃんを前に微塵も心配してないみたい。
「解釈の違いですよ。私はちゃんと見据えています。能力者のための未来を」
「同朋を支配しておいてなにをいうか」
男の顔が笑顔で歪んだ。
「それは誤解です。私たちはただ一つになっただけですよ。より深くわかりあうために。そしてより強くなるために」
やれやれ、めんどくさそうな相手だわ。