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「手も触れず物を動かし、何もないところから炎を生み出す。そういった派手な力を恐れる者も多いと思うが、もっとも恐ろしいのはこの超感覚そのものであるとわしは考えておる」
ん? なんだか私のほうを意味ありげに見たような気がする。なんだろう?
「クリスティーナ殿。そちらの術者が能力者相手にもっとも手こずったのは、集団戦ではありませぬかな?」
「……ええ、そうね。私たち魔術師なんかは特にそうだわ。自分で言うのもなんだけど集団行動なんてガラじゃないし、魔術師が集まったところでそれぞれ勝手に戦うだけよ。でも貴方たち超能力者は違うわ。まるで訓練された軍隊みたいに連携してくるんだから厄介よね」
ほうほう、さすが魔術師。生粋のボッチ気質ですね。
ママンはアナタたちの将来がとっても心配だわぁ。
クリスティーナにキッと睨まれた。ああ、ボッチなのを気にしてるんですね、サーセン。
「うむ。じゃがわし等能力者は訓練をうけたわけではない。そんなことする必要もなく最適な行動がとれるのじゃよ」
「……なるほどね。約束事が必要ではないというのは本当にやっかいだわ。意思伝達をしながら戦っていたってことかしら」
「それもあるじゃろう。じゃがテレパシーも力の一種にすぎない。使える者は限られている。そこで先ほど言った超感覚が鍵となってくる。この感覚はある程度であれば共有ができるものでな。戦いのさなか誰がどこでどう行動しているか、ある程度であれば全員が把握できるじゃろう」
うは、それはひどい。情報は使いようによっては強力な武器なのよ。
今行われている能力者対術者のバトルではその差は大きいだろう。あえて例えるなら通信機器有無のハンデ戦をやってるようなものね。これは通信が行えない術者側のほうが勝てないわ。
「そう、私たちが押されるのは当然だったわけか。まさかバラバラに戦っては不利だと手を組んだのが逆効果だったなんてね。でも個々に戦ってもプロセスの時間差がある限り術者側が不利だわ」
まさに八方塞がりね。でもクリスティーナも甘いわ。
私だったら術者が個々に戦おうとしても、容赦なく集団で襲うわよ、グフフフ。
「さすがダナコ。卑怯さには定評がある」
だまらっしゃい、ラカン。戦いにおいて卑怯は立派な作法なのよ。オーッホッホッホ。