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うーん。もう食べられないわ。
私は座敷に横になってうなっていた。
ああ~。畳がひんやりしてて気持ちいいわぁ~。
なんてノンキにやってる場合じゃないわね。
クッ、身動きがとれない……。恐るべきは超能力だわ。
「超能力は関係ない」
うむ。相変わらず冷静ですね、ラカンさん。げっぷ~。
「なんだか真剣にやるのがすごく馬鹿らしくなったんだけど」
人のせいにするのはよくないわよ、クリスティーナ。はやく仲直りしなさいな。
「簡単に言ってくれるわね。こちらは実際に被害が出ているのよ。それなりのお土産でもいただかないとねえ。そうは思わない? ヌゥーレ協会の会長さん」
なぬ? お爺ちゃんって会長だったの!? でもお爺ちゃんってもともと存在したヌゥーレ協会に入ったのよね?
「そう、そして頭角を現して会長にまで上り詰めたのよ。たしか三代目だったかしら?」
「うむ、よう調べとるのう」
「そりゃあ、目下矛を交えている敵の情報ですもの。必死に調べるわよ」
たしかにのうとかいいながら、お爺ちゃんが卓にあったカゴから一つみかんを一つ取り出した。
「わしら能力者は様々な力を持っている。それによってもたらされる奇跡は、お主ら術者にとってありふれたものであると思うがいかに?」
お爺ちゃんの手から一度ゆっくりと浮かび上がったみかんが卓の中央に着地した。
これにたいしてクリスティーナがなにやら呪文を唱える。すると同じようにみかんが浮かび上がってまた着地した。
「そうね。そこに脅威は感じない。問題は奇跡を体現するまでのプロセスよ。私たちはその事象を発生させるために呪文、陣、なんらかの約束事を必要とする。でも――」
「うむ、わしらは超感覚という特異性によってタイムロスがほぼない。それが戦いにおいて大きな力の差を生んでいる」
なるほどねえ。アレ? ということはやっぱり分類的には私も超能力者なのかしら。
まあそれは今はいいか。たしかにその時間差は戦いに響くわね。術者側が劣勢になるのもうなづけるわ。
「この超感覚は能力者であれば誰でも持っているものじゃが、これは力を発現させる以外にその名の通り感覚として機能している。そしてそれこそが今回の騒動の原因となる」