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私はさきほどから感じている刺激のもとを慎重に探る。
商店街で買い物に忙しいおばちゃんたちが多いなか、ひとりの老人が行きかう人々をのんびり眺めながら佇んでいた。
コイツよ。この老人がこの力の発生源だわ。
陰陽師の九条とも、魔術師のクリスティーナとも違う感覚。でもこの力は間違いなく彼らと同じ異能の力だわ。そして……、かなり大きな力を持っている。
探ってるうちにその老人と目があってしまう。
うっ、まずい。気づかれたか。
私は偶然目があった風を装ってそのまま退散しようとしたのだけれど、振り向こうとしたところで身体がいうことをいきかないことに気づいた。
なっ、動きをとめられた!?
私は意識を集中させる。老人から感じる力が私のまわりまで拡大し、まるで押さえつけるように身体を覆っていた。
社会的ヒエラルキーの上位に君臨するJKを思い通りに弄ぼうとするなんて、なんたる不遜! このダナコ様がその欲望をへし折ってあげてよ!
これでもいまだに干渉の力は鍛え続けているんだからね。
私を押さえつけている力に干渉を開始する。
大丈夫。初めて触れる力だけど問題ない。操れるわ。私はゆっくりと私を拘束する力を緩めていく。
老人がびくりと身体を震えさせるのが見えた。
フフフ、女子高生をなめんじゃないわよ。さあてどう料理してくれようか。
私は驚きに目を見開いてこっちを見つめる老人に向かって足を踏み出した。
「フォッフォッフォッ。いやぁ、驚いたわい。まさかあんな簡単に見抜かれてしまうとはのう」
私はパクパクとホットケーキを口に入れながら老人の笑い声を聞いていた。
え? なにやってんだって? もちろん謝罪と賠償を要求したのよ。当然でしょ。
フフフ、タダで食べるホットケーキの味はまた格別ね。モグモグ。
「そのうえこんなものをせびられるとは思わんかったわい」
フン、ありがたく思いなさいよ。本来だったらおまわりさんこっちです案件だったんだからね。というわけでおかわり!
「豪儀なお嬢さんだのう。それに見合った力も持っておる。うむ、気に入ったぞい。好きなだけ食べなされ」
ほんと? いやっほぅい! 明日の朝のぶんまで食いだめしてやるわ。見てなさい!
「フォッフォッフォッ」
このあと滅茶苦茶ホットケーキした。