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放課後――。
私は一人で乙女坂を歩いていた。
最近はラカンと一緒に帰るのが当たり前になっていたけど今日は私一人。別にラカンのやつがコーヒーを勝手に飲みやがったから喧嘩中とかじゃないからね。
どうやらこれまでラカンが私と一緒だったのは護衛のつもりもあったらしい。でもこの間の一件で魔術師とは一応の決着がついたわけで。おかげさまで私の安全も確保されたわ。これでラカンもお役御免ってわけなのよ。
べっ、別に寂しくなんてないんだからね!
まあ、今まで通りでも構わないんじゃないのと思わなくはないけど。なんか私が言ってたことを気にしたみたい。
今後、襲われるようなことがあるとしたら風魔衆のほうだってやつね。冗談半分のつもりだったんだけど、どうやらラカンは本気にしたらしい。
というわけで私はひさしぶりにボッチ帰宅を噛みしめていると。
ヤバいわ……。なんだか別の意味で危機感を感じる。
まさかこれって振り出しに戻ったってこと? ぐぬぬぬぬ。
い、いや。まさか天災ダナコ様に限ってボッチに戻るなんてミス犯さないはずよ。ここしばらくの騒動で知り合いとかたくさんできたし。
風間会長とか変態フレンズとかジゴロあんちゃんとか騎士団のジ……とか。交流会とかで別の学校にだって行ったんだからね。
ってダメじゃん。知り合ったヤツら全部、ヌゥーレ協会に狙われてますわ。
おのれ……、ヌゥーレ協会め。まさかこんな形で私を攻撃してくるとは……。
ま、まあいいわ。この程度の攻撃なんて、成長した今の私にとってはしょせん致命傷程度よ。ど、どうってことないわ。
さあて、気晴らしにひさしぶりの寄り道でもしていきますか。
そうねえ。確か近くに商店街があったわよね。適当に見てまわって買い食いでもしてみるか。
というわけでいつもの通学路からそれて商店街へと向かった。人通りはそれほど変わらないけど、いつもの周りは学生だらけってのとは違ってなんだかテンションあがってきたぁああ。
そんなところに私の脳髄をくすぐるような香りが。
こ、この香りはホァットクェーキ! 最近はオサレなパンケーキが流行ってるらしいけど、私としては喫茶店で出てくるような昔ながらの大サイズ二枚を、バターとはちみつで食すのがジャスティスだと思っている。
よし、これにするか。
私はこの芳醇な香りの元を辿ろうとしたんだけど、そこに私を刺激する別のものが。
残念ながらそれは鼻ではなく、最近鍛え上げられた超感覚を刺激するものだった。