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間もなくして本隊が到着する。
内心ビクついている私をよそに、皆さんいろいろな後始末や里の調査やらにせわしく動き始めた。
あれれ? 私のことは放置ですか?
そんな風に拍子抜けしていると肩をトントンと叩かれた。そこには相変わらず無表情なラカンの姿が。
いや……、私にはわかる。この娘っこ、微妙にニヤついているわね。
ま、まさか……、コイツ。私が焦っていたのに気づいている!? なんてこと、ラカンに弱みを握られる日がくるなんて……。
少なからずショックを受けていると風間会長もやってきた。どうやら私と九条の戦いは遠くからでも監視されていたようで、あの悲劇的なことの顛末も知っていたそうな。
なあんだ。心配して損したわ。
ん? まてよ。ということは私の力の秘密まで……。
というのは杞憂で、あのとき私が放った『覇王滅殺亀亀波』の秘密はバレていなかった。そんなことより九条を飛び膝蹴りでノックアウトしたことがことのほか評価されていた。主に脳筋たちに。
あれほど険悪な仲だったコングですら、再会すると同時にサムズアップ。「ナイスキックだったぜ」と笑顔とともに調査に駆け出していった。
ジゴロあんちゃんなんて「もっと角度をこんな感じにだな……」とか、どうでもいいアドバイスをよこしてくる。
お前ら忍者なんだよね。もうちょっと知力方面にパラメータ振ったほうがいいんじゃないですかねえ。心配だよ、あたしゃ。
まあいいか。これで一件落着ってやつよね。私が手伝えることなんてなさそうだし、遊んで待ってるとするか。それじゃあいくわよ、ラカン。
え? なにするんだって?
確かにこんな田舎じゃあ、なんにも遊ぶものなさそうね。
そうだわ! 人もいなくなったことだし、金目のものを頂いてしまいましょう! そして世界中の恵まれないダナコ様のため有効活用するのよ! そうと決まれば――。
私はおおきめの家に目をつけ駆け出そうとしたのだが、口元をハンカチで覆われて意識を失った。ぐーぐー。
ハッ、私はいったいなにを……。
気づくとバスに揺られていた。なんだか大金持ちになる夢を見てた気がするんだけど思い出せないわ。
どうやら黒脛巾衆の里の調査も終わって帰還の真っ最中らしい。
聞くところによると、やっぱり黒脛巾衆は全滅だったそうな。悪魔さんぱねえっす。今後は甲賀、軒猿、風魔の三体制でやりくりしていくみたい。
それから九条の隠れ家として利用していた場所も見つかり、怪しげな資料の数々が押収されていた。さっそく各一族共同で調査していくらしい。今後、陰陽術への対策など期待されているそうだけど、まあ私にはあまり関係ないわね。
やれやれ、交流会に始まり、いろいろと振り回された一件だったけど、この一連の騒動もこれでようやく終わるのね。
私は外の景色をぼんやり眺めながら、懐かしの我が家でダラダラするのを待ち焦がれていた。