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月曜日――休み明けという最も人々に呪われる曜日さんである。
その気持ちは私も変わらないが今日はちょっと違う。ゾンビ対策が十分に練れた私は、闘志を溢れさせながら登校した。
そして何も起こらなかった。
肩透かしを食らった私はちょっとテンションをさげつつ、まだやるべきことがあるのを思い出す。
ホームルーム前の雑談タイムのなか、私は教室後方に居座る武術家のもとへと足を運んだ。
今日はちゃんと登校しやがりましたね、うむうむ。そしてあいかわらず読書しているタイトルは羅生門。
クッ、やはりコイツ只者ではないわ。強そうな雰囲気でグイグイこっちを威圧してきやがりますよ。
私はところてんをひねり出すがごとく勇気を振り絞って話しかけた。
「話があるのだけど、今いいかしら?」
ラカンは本を閉じるとこちらへ顔を向けた。
まさかこれほどとはな……。これが真の武術のプレッシャーというものなのか。ボッチ生活が長かったせいで、ただ会話に緊張してるだけのような気がしなくもないが気のせいだろう。
とりあえず「ダナコ、おちつくのよ」と自分に言い聞かせながら、ラカンと見つめあっていたのだがあることに気が付く。
コイツ……地味系モブ武術家と思いきや、隠れ美少女だと! 前髪をおろしたオカッパに惑わされていたがこれは紛れもない逸材! ……あれ? でもこの娘どこかで会ったような気が……。
そんなこんなで私が考え込んでいると、ラカンは黙ってうなずき席を立つ。そのまま教室の外へ出ていく。
なんだ? ついてこいっていうのか? なに? 表出ろ的なノリなわけ? 怒ってないわよね!?
私はちょっとだけ気圧されつつもラカンの後を追った。ラカンは廊下の端までいくと立ち止まって振り向く。
クッ、なんでコイツはいちいちプレッシャーをかけてくるんだ。心の中でそんなことをツッコミつつも時間だけが流れていく。
これはアレか? こちらから話を切り出さないといけない流れなのか? そういえば私のほうから話しかけたんだった。失敬失敬。
「この間のことだけれど、アナタはどこまで知っているのかしら? できればいろいろと教えてほしいのだけれど」
どうだ! なかなか大人な対応だろう。そもそもちょっと気になっていたんだよね。
私ですらあの不思議体験にはのまれていたのに、ラカンは堂々とゾンビに向かい合ってみせた。やはり只者ではないわ。たぶん正当継承者とかカッコいい肩書があるはずよ!
「私たちは貴方に教えられて、ようやく敵の正体がつかめたところ。こちらのほうこそ貴方に聞きたい。一体貴方はどこまで知っているの?」
なるほど……。まったく意味が分からない。
ただ一つだけわかったことがあるわ。コイツは質問を質問で返してはいけませんとママンに教わってはいなわね。