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「ふむ……、いったいどういう仕組みで術をふせいでいるのか。実に面白い」
コイツ、支配の術が効かないとわかった上で試してるのか。
余裕だね! まだ戦ってる最中だっていうのに、もう勝った気でいるよ。
私はと言うと、九条がときどき飛ばしてくる燕を撃退するのに夢中です。ちくしょうめぇええ!
「このままではらちがあかないな。隠れ家でじっくり研究させてもらうとしようか。というわけでさっそくだが拘束させてもらおう。支配の術が効かない以上、少々強引なやり方になるがね」
なにが「というわけ」なんだか。全力で遠慮しますっての。
そんな私の意思を無視して、九条がまた印を結んだ。これは炎の柱のときとはちょっと違うかな。嫌な気配の広がり方もさっきとは違うみたいだし。
『その感覚を覚えておけ。お前の力を真に発揮するには、まず術そのものを知覚する必要がある』
そんなこと言われてもねえ。
ってやばっ! なんか地面から植物がウネウネと飛び出してきた! 動きはそれほど素早くはないけど、この数はやっかいだわ。
カプサイシンで動きを止められるんだけど、これ以上消費したくない。私は植物の動きを読んで避ける作業に集中せざるを得なくなる。
こんなんじゃ術を知覚するどころじゃないっての! 術の知覚なんて、交流会のときに黒脛巾衆を止めたときくらいしかないのよ。あのときは会長が戦ってくれたおかげで、じっくりと集中できる時間があったし。
『ほお、奴の傀儡を止めたのか。すでに試していたとは感心したぞ。それだ、術そのものに干渉することさえできれば、お前はどのような術者相手であろうと無敵なのだ』
だ~か~ら~、あのときはたまたまうまくいっただけなのよ。この状況で成功させるなんてできるわけないでしょ。
とはいえ、このままじゃいつか捉えられそう。ムムム。
仕方ない……。ここは悪魔さんを信じるしかないか。悪魔を信じるって時点で終わってる気がしなくもないけど。
動きを止めた私を植物が拘束していく。
ああ、このシチュエーション……。日本全国つつうらうらにいる男性ファン垂涎のご褒美シーンですわ。
なんてことを考えながら目を閉じる。