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ヘイヘーイ! なにを赤くなってんだい? 見かけによらずシャイなんだねえ。
私はカプサイシンを放射し続けていた。完全によけきれない九条は、徐々にその身を赤く染められていく。
「なぜだ!? なぜ私の術が効かない」
どうやら九条は性懲りもなく、私を黙らせようと支配の術を使い続けていたみたいね。私にとってはうれしい反応だわ。九条が支配の術に固執する限り、私の優勢は崩れないんだから。
「くそっ! なんて様だ。こんなもの……私が望む戦いではない」
そういえばこの男、結構戦いたがってたわね。見かけによらず脳筋タイプなのかしら。まあそんなことどうでもいいか。私が相手をするからには、まともに戦ってあげるなんてことありえないわけで。オホホホホ。
「いいかげんにしろ!」
うお! なんか飛ばしてきたわ。
これはアレだね。紙をとばしてそれが生き物になったりするヤツ。燕みたいなのが私の周りを飛び回り、隙あらば突撃してくる。
ならば、コッチよ!
私は別の拳銃で応酬する。これは交流会でもつかった墨汁バージョンだ。
墨汁を浴びた燕は一気に失速して地面に墜落した。そこには燕ではなく墨汁でしなびた紙だけが残されている。
予想通り。このタイプは文字を打ち消されると力を失うわ。
「どうやらすべての術に対して無敵というわけではないようだな」
チッ、気づかれたか。そのままくぁwせdrftgyふじこlpしていればいいものを。
九条がなにやら印を結んだ。嫌な気配が地を這って私のもとへとたどり着く。その瞬間、全身に鳥肌が立つような錯覚を覚え、全力で飛び跳ねた。
寸前までいた場所に火柱が立ち上る。
あぶなっ! なんて危険な攻撃をしてくるのよ。
「ふん、逃げ回るのは得意なようだな。だが、これではっきりした。信じられないことだが、支配の術に対してかなりの耐性を持っているな。確かにそれならば結界をかいくぐり、忍者たちを解放できたことにとりあえず納得はできる」
かなり余裕が戻ってきたようね。薄気味悪い笑みまで復活しているわ。
「なかなか興味深い素材だ。私の実験意欲を刺激してくれる存在だよ」
刺激なんかしてないっての! これだからこのタイプの術者はきらいなのよ。