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とりあえず私は悪魔をひきつれて皆が待つ山へと向かった。
事前に連絡はしておいたので問題はないはず。ないわよね? ロメオツー、信じてるからね。
山をしばらく登っていると少し開けた場所に本隊の人たちが揃っていた。みんな幾分顔がこわばっている気がしなくもない。まあ、悪魔さんの見た目怖いからね。とりあえずは安心したまえよ。
私はさっき教えてもらった敵の情報をみんなに説明した。
「そんなことになっていたなんて……」
風間会長も驚いているみたいね。いや、会長だけじゃないか。だいたいの人が驚いている。驚いていないのは相変わらず表情が読みづらい会長のパパンとロメオツーくらいね。
「ロメオツーじゃない」
アンタは頑なにロメオツーを拒むわね。ロメオにいったいなんの恨みがあるのよ。
まあ、反抗期のラカンのことは放っておくとして、問題はこれからよね。
全滅した黒脛巾衆には申し訳ないけど、幸いにも先行した甲賀衆や、さっき捕まったジゴロあんちゃんたちは自由を奪われているもののまだ無事だ。彼らの解放と九条なる陰陽師の打倒が今後の課題となるわね。
でも大丈夫! なんてったってこっちには黒脛巾衆の里に結界をはった当人がいるのだから。正確には当悪魔だけど。
『ふむ……、結界は解除してやってもよいが、あの男に教えた支配の術はやっかいだと思うぞ』
む? なるほど。アイツの術か……。いや、ジゴロあんちゃんは結界の影響を受けている状態でも、アイツの術に一発だけならギリギリ耐えていたわ。風魔のお札セカンドバージョンならなんとかいけるはず。
そもそも結界さえなければ、私たち得意の人海戦術が使えるわ。離れた場所から飛び道具の飽和攻撃で完勝できるよ。
『あれも陰陽師としてはそこそこの力量を持つ。式を飛ばしその目を利用すれば、多少離れたところであっても支配からは逃れられぬぞ。まあ、一度に大勢を支配するのは難しいだろうがな』
まずいわね。自慢じゃないけどこっちが用意している火力は相当なものだわ。少人数でも向こうに操られれば……、被害は相当なものになるかもしれない。
となると少人数でのスナイプが安全か……。
風間会長が頷いた。どうやらそのあたりの技術も習得済らしい。
『もっと安全で確実な手があるぞ』
その時の悪魔の顔は普段の三割増しに凶悪な笑顔だった。ひぃえええ。