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なんだか暇ね……。早くもバスの中でだらけているのに飽きてしまったわ。
私たちが向かっている黒脛巾衆の里は、山形県の山奥にあるらしい。高速道路を利用しているとはいえ、まだまだ時間はかかるわよねえ。
ああー、退屈退屈。
そうだわ! せっかくみんなで協力することになったんだし、ここはお互い親交を深めるべきよ。というわけで――。
ヘイ! コング! 仲直りしようZE!
思いっきりと睨み返されてしまった。
チッ、せっかく仲よくしてあげようとしたのに。男のくせにいつまでも過去のことを根に持ってんじゃないわよ。
それにしてもこのままじゃ皆口会長とお近づきになるのに激しく邪魔ね。私の玉の輿計画が水の泡になってしまうわ。
しかたない。アンタに恨みはないけど『覇王滅殺亀亀波』で木っ端みじんになりなさい。覇王! 滅殺! くぁ~むぇ~か~め――。
「ダナコ」
なによ? ラカン。今いいとこなんだからあとに――。
ラカンが私の口元にハンカチを当ててきたところで、私の意識はフェードアウトした。ぐーぐー。
――ユサユサ。
ああー、気持ちええ~。
――ユサユサ。
この微妙な揺れがさらに深い眠りを誘ってくるわ~。
――ユサユサ。
このまま二度寝いってみよう~。
――ドスッ!
ハッ! 私は一体なにを……。
突然意識が覚醒した私は、自分の状況をすぐには思い出せなかった。なんだか微妙に脇腹にダメージがあるわ。
そういえば、山形に向かってるんだったわね、って夜だったはずなのに明るくなってる。
これは一体……。もしや黒脛巾衆の奇襲か! 気をつけなさい、ラカン! 私の第六感が特盛の危険を知らせてきてるわ! まちがいない!
それにしても、まさか昼夜を逆転させるほどの術を使ってくるとは。もはや魔術や陰陽術ってレベルじゃない。神の御業といってもいいくらいだわ。
まちがいない、この戦いは過去類を見ないほどの熾烈なものになるわね。
「……ボケるのに満足したならはやく降りて。みんな待ってる」
……はい。