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――ムムムムム。
よくよく考えると今はボッチな学校生活の心配より、ゾンビの襲撃を心配したほうがいいんじゃないだろうか。
私は学校から帰りプライベートタイムを満喫しようとしたところで、ふとそんな考えが頭をよぎった。
ボッチな生活は私の精神を殺しにくるが、ゾンビのほうは私を本殺しにくるのだ。どちらが危険かは明白である。
さすが私。なかなか的確な判断力だわ。この判断ができるまで丸一日かかった点は置いておくとして、さすが私だわ。
早速、対ゾンビ強化プランを考えよう。
まず前回の反省点は、あまりの超展開に我を忘れてしまったことね。
本来の実力を発揮できず敗北なんて、そんな展開スポーツ漫画だけで十分よ。あせりは無駄な体力消耗につながり、結果自ら戦略の手を潰していった。
最悪ね。勝てる試合を落とすなんてカマセ役もいいところだわ。
でも次は失敗しない。もはやあの程度の非日常ではひるんでなんかやらない。
日頃、異世界転移のために鍛え続けた力を発揮できれば、あの程度のゾンビならどうにかできるわ。
ただしワチャワチャブーストには気を付けないといけないわね。あのスピードだけは危険だわ。
でも速いとは言っても人間の域を超えないレベルだった。落ち着いて攻撃をさばけばなんとかなるはず。
なんといってもヤツは馬鹿だ。攻撃は単調で直線的。間違いなく私に食らいつくこと優先で行動してくる。
そこを突くことができればそう悲観的になる必要はない。
うむ、とりあえず心構えはこんなところか。あんがいボッチ脱出よりも難易度は低いかもしれないな。
しかし、これで終わるわけにはいかない。なんといっても私という美少女の命がかかっているのだ。打てる手はすべて打っておくべきよね。
そう考えると、私は部屋の片隅にあるチェストの引き出しを開けた。そして片隅に鎮座していたブツを取り出す。
「今は少しでも力を高めるとき……、たとえこの身に巣食う悪魔を呼び起こすことになろうとも――」
それは運動後にプロテインと一緒にとることで、筋力をよりパワーアップできるアイテム――粉飴である。しかしそれはお腹に巣食う脂肪という名の悪魔の力も増大させる禁忌のアイテムでもある。
この恐ろしいデメリットがあるため私はしばらくの間、この呪われたアイテムをマイチェストに封印していたわけなのだが、命がかかっている今はそんなこと言ってられないだろう。
私は覚悟をきめると台所に行き、プロテインと粉飴のたっぷり入ったドリンクを一気に飲み干した。
よし! 今日も筋トレいってみようか!