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とにかくアイツらの術は感知が可能であることを力説した。
確かに間近で集中しなければならないのは危険ではあるけど、それは私の察知能力が未熟なだけな可能性もあるのだから。優れた忍者であれば、もっと簡単にあの術を見破れるかもしれないわ。
ふむ、少しは手ごたえがあったかな。まあここまでの話は事実なわけだし当然ね。問題はこの後よ。
「それで――奴らの術を察知できたとして、その後はどうする?」
きたわね、ここからが本当の勝負よ。私の天災的頭脳でなんとしてもごまかしてみせるわ。
私は一呼吸いれるとその質問に答えた。私がヤツらの術を破った方法とは――。
ズバリ! 気合よ!
その瞬間、会議室が凍り付いた。
「これはひどい」
うるさいわよ、ラカン。偉そうなおっさんたちの呆けたような顔が見れたんだから、ありがたく拝んでおきなさい。それからジゴロあんちゃんもニヤニヤするのやめい。
「ゴホンッ! 今の君の発言は本気なのか? それともただの冗談かね」
冗談とは失敬な。本気も本気、本当の話ですわよ。だいたい怪しげな力を感じたからといって、そんなすぐに対処法なんてわかるはずないでしょ。
だからとにかくなんとか力の流れをとめられないか、いろいろ試行錯誤していたの。それで最終的に勝負を決めたのが気合だったって話よ。
だいたいここに集まってる人たちも観客席から見ていたはずよね? 私が最後に気合を放ったところを。
「確かに何やらやっていたようだが……。あれは何かの術ではないのか?」
違うわ。まあ、あえて技名をつけるなら『覇王滅殺亀亀波』ね。自分の中にたまりにたまったストレスなんかを気合とともに解き放つ技よ。
要は魔術だろうが陰陽術だろうが、その根底にあるのは生命の力。それは忍術だって同じよね。気とか操っていろんな術を使ってるんだから。
だったら術理とか難しいこと考えないで、でっかい力をぶつけてしまえばいいのよ。
まあ、納得できないのもわからなくないわ。でも実際『覇王滅殺亀亀波』でアイツらの術は解けたのよ。この事実はゆるがしようがないわ!
フフフ、適当に押し通してやったわよ。
さて、どう反応するかな? いや、ここは最後の一押しを決めるべきか。
さあ! 皆もやつらの術を破るため、『覇王滅殺亀亀波』を極めるのよ。
それではご一緒に――。
『覇王滅殺亀亀波!』
やってくれたのは風間会長のパパンだけだった。寂しい。