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コホンッ! いやあ、まいったねえ。まさかこんなことになるなんて。
今の私は風間会長だけでなく、観客全員の注目を一身にあびていますよ。
まあ、無理もないか。
はたから見れば私がなんらかの不思議パワーを放って、黒脛巾衆を倒したように見えただろう。実際は妄想を解き放っただけなんですけどねえ。
言い訳はしない。信じてもらえそうにないし、そもそも私の力の秘密をバラすわけにもいかないからね。さて、どんな言い訳をしようか……。
ところでそこに転がった黒脛巾衆さん死んでないよね。ないよね?
そういえばあまりにも危うそうな崩れ落ち方をした黒脛巾衆さんのことを思い出して確認してみたのだが――。
「大丈夫――といいたいところなんだけど、死んでいるわね」
容態を調べていた風間会長から返ってきた答えは――Noぉおおおおお!
やばい! コレやばいよね!? いくら腕試しイベントだとしても、殺っちゃったら普通にまずいんだよね? 「お巡りさんこの人です」される事案発生だよね?
うぁああああああ! どうしてこんなことに! きっといかにもエリート風で行き遅れの女検事から、ネチネチといびられることになるんだわ。そしてそこに颯爽とイケメン弁護士が現れて私を救ってくれるのよ。そして二人に生まれていた信頼の絆は、いつしか愛へと……、デュフフフ。
「落ち着いて、吉田さん。確かに死んでいるけれど貴方が原因とは考えにくいわ」
……は? いやいや、どうしてそんなこと言い切れるのよ。
私は現場へと近づいた。
ゲッ! この顔は……、誰? いやいや、そういうボケは今はいいのよ、ワタシ。
頭巾をはがされた黒脛巾衆の顔は、干からびた死体の顔という言葉がぴったりの様相だった。
おいおい、いやなニオイがプンプン臭ってきましたよ。死体なだけに。
「僕たちは最初から死体と戦わされていたのかもしれないね」
おおう、相変わらず素早い。答えたのはいつの間にやってきていたのか副会長だった。
さすが変態ペア。二人そろうと頼もしいわね。
そんなやり取りをしていると、甲賀衆の皆口会長がやってきた。
「緊急事態だ。黒脛巾衆の関係者たちが姿を消した。黒脛巾衆の里を監視していた者たちとの連絡も途絶えているとのことだ。至急、黒脛巾衆をのぞいた三者で話し合いたい。無論、若手同士ではなく頭領同士でだ」
やれやれ、厄介ごとはとんでもない方向へと向かい始めたようだわ。