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風間会長と黒脛巾衆Aの影が交錯する。二人の戦いはだんだんと激しさを増してきたわ。私が符を潰しておいたおかげで、ほとんど単なる肉弾戦になってるけど、やはり体術では会長のほうが上をいってるわね。
フッフッフ、勝ちはもらったかしら。え? 私はなにしてるんだって?
ヘイヘーイ! 黒脛巾衆びびってるぅううう!
――と離れた安全なところから煽っております。やっぱり戦いはプロにまかせるのが一番だと思うわけよ。それになれない近接戦なんてやったから疲れがたまっててね。ちょっと休憩中。
まあ、どこかでまだ副会長も戦っているだろうし、そのあたりの油断はしてない。休憩ついでに精神集中でもしてみるか。
うーむ、副会長は林やら小屋やらの障害物を越えた向こう側で戦っているみたいね。
ん? なんだか変な感じがするわ。この変な力の流れは何なんだろう?
そういえばこの学校に来てから、ここまで集中した気配察知はやったことがなかったわね。はじめから存在してたのかしら。
観客席には忍者が何人もいるんだから、気づいてたらなんらかの反応があってもいいと思うんだけど。やっぱり誰もこの力の流れに気づいてないのかなあ。
ってことはこれは忍術のたぐいではなくて、忍者では察知しにくい力ってことか。
これは事件のニオイがプンプンですわ。
よし、集中集中。
うーん、これは……、黒脛巾衆Aに繋がっているような? なんなんだろう。
ちょっとこの力の流れに干渉できないかためしてみようかしら。
ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。
……うまくいかないわね。ならば!
うぉおおお! 気合ぢゃぁああああ! 目には目を、力には力を! 我が妄想力よ、この不可思議な力を退けたまえ!
くっ、手ごわい。なんとなく干渉している手ごたえは感じるんだけど、どうにも動かせない。このままってのはなんだか悔しい。
はぁあああああ! もっとだ、もっと力を! 我がすべての想念をこの手に!
砕け散れ! すべてのリア充ども!
『覇王滅殺亀亀波!!』
私は両手から中学二年生特有のいろいろと大事なものを解き放つ。
次の瞬間、風間会長と激闘を演じていた黒脛巾衆Aは、まるで糸の切れた操り人形のようにパタリと倒れて動かなくなった。
亀亀波のポージングをしたままだった私と風間会長の目が合う。ちなみにガニ股である。
やだ、ちょっと恥ずかしい。